第4話 選択肢
何時間、何十時間も歩き続けたが、どこを見ても綺麗な一直線の地平線が続いている。頭がおかしくなりそうだった。
太陽の動きで辛うじて方角は分かるが、そもそもどの方角へ向かえば良いのかすら分からない。
終わりの見えない行進は確実に精神を蝕んでいく。
空腹、喉の渇き、孤独、たった一日で驚くほどに精神と肉体は疲弊した。
もしかしたら自分の異世界人生は草原を歩き続けた末に餓死する、なんて最悪なものになるかも知れない。
嫌な妄想が少しずつ現実味を帯び始めた頃、最初に比べて随分とゆっくりな動きになった足が何かを踏んだ。
草よりも硬い、四角い石のような踏み心地のそれは、カチリ、と音を鳴らしながら地面に沈んだ。
すると、大きな地響きとともに目の前の地面が割れ、地下へと続く巨大な階段が姿を現した。
『エタレス草原の隠しダンジョン』
・エタレス草原内に複数の出入り口が存在する広大な地下ダンジョン。
・ダンジョン内には独自の生態系が築かれており、多数の生物や植物が生存してい
る。
・危険度 中
突如流れ込んで来た情報と目の前で起きた出来事は、不安と思考をすべて吹き飛ばすのにはあまりにも十分だった。
――そうか、ここはエタレス草原って名前の場所だったのか。
それが、今の彼にできる最大限の思考だった。
一度落ち着くために何度か深呼吸をして状況を整理した結果、選べるような選択肢は無いのだと理解した。
このままエタレス草原を歩き続けたところで待っているのは餓死、もしくは精神の崩壊だ。
つまりは現状を変えるため、自身が生存できる確率を少しでも上げるためにも、ダンジョン内へと進む以外の選択肢は無いのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます