第32話 保守とは・・・。

「・・・でもセンパイ、どうして主任や師長を断り続けるんですかぁ? 私にはわかりませぇん。」出世出来るのにと言いたげな麗奈に微笑を返して丁寧に続けた。

「だって上に行くと看護師の初心を忘れてしまいそうな気がしてね・・・、まだあの時のまま、看護師になろうと決めた心のまま、おとうさんと居たいからな・・・お父さんの命に寄り添って居たいんだ。」

 優しくて美しい顔だった・・・。

真顔に戻ったは三咲心の襞の思い出を一つ一つ確かめる様に三咲自身に戒めをしているかの様に言葉を繰り出していた。

「世の中を変えようとしたらあかんぞ、三咲?」

「今まで暮らしてきた文化を新しくしたらカッコエエかも知れんが、それは不毛や。」父の言葉を一字一句思い出しながら語っていた。

「血が流れるだけで徳はない。」

「革命や連合、総括やレジスタンスや言うたら若い子は憧れるけど、な・・・。」モノクロームの父が話しているレビューを想いながら麗奈に語っていた。

「伝統の文化を守る事こそ重要でカッコエエんや三咲?」

「お父さんに言われたからそうしてる。」麗奈を見ていたが、今までにない素直な眼差しだな・・・。

 と、思う麗奈の心は何故だか胸の奥の方で母性がキュン!と音を立てたのが分かった。

 言葉に言い表せない懐かしい感情・・・麗奈のいつか抱いた思いにソックリの感情だった・・・。

 暖かい涙がキラリと光っていた。 

なに泣いてるんだ? という顔を覗かせながら三咲は丁寧な言葉を噛み締める様に言う・・・。

「角さんは無償の施しが嬉しかったそうだよ?」

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