第28話 角さんの後悔
「へえー、センパイ、たな・カクさんと親戚なんですか?」
「違うよ、この前の休みに角さんの生誕100周年の生家と墓が特別公開されて田中角栄記念館に保守だったお父さんに連れられて行ってきたんだ、墓参りもしたよ? お墓の前にはシッカリした門構えがあって、誰でも入れる訳じゃないんだな、広い敷地の真中に角さんのお墓はあるんだ・・・。アタシはついついお墓の掃除とやらをやってしまった、おとうさんと一緒に・・・。」身体が勝手に動いたんだと、しきりに説明する三咲の話しの内容から田中角栄の縁故だという事実を引き出そうとしていた麗奈だったが途中で挫折し、マツエクの事ばかりを考えていた。
「・・・でもセンパイ、どうして主任や師長を断り続けるんですかぁ? 私にはわかりませぇん。」出世出来るのにと言いたげな麗奈に微笑を返して丁寧に続けた。
「だって上に行くと看護師の初心を忘れてしまいそうな気がしてね・・・、まだあの時のまま、看護師になろうと決めた心のまま、おとうさんと居たいからな・・・お父さんの命に寄り添って居たいんだ。」
優しくて美しい顔だった・・・。
真顔に戻ったは三咲心の襞の思い出を一つ一つ確かめる様に三咲自身に戒めをしているかの様に言葉を繰り出していた。
「世の中を変えようとしたらあかんぞ、三咲?」
「今まで暮らしてきた文化を新しくしたらカッコエエかも知れんが、それは不毛や。」父の言葉を一字一句思い出しながら語っていた。
「血が流れるだけで徳はない。」
「革命や連合、総括やレジスタンスや言うたら若い子は憧れるけど、な・・・。」モノクロームの父が話しているレビューを想いながら麗奈に語っていた。
「伝統の文化を守る事こそ重要でカッコエエんや三咲?」
「お父さんに言われたからそうしてる。」麗奈を見ていたが、今までにない素直な眼差しだな・・・。
と、思う麗奈の心は何故だか胸の奥の方で母性がキュン!と音を立てたのが分かった。
言葉に言い表せない懐かしい感情・・・麗奈のいつか抱いた思いにソックリの感情だった・・・。
暖かい涙がキラリと光っていた。
なに泣いてるんだ? という顔を覗かせながら三咲は丁寧な言葉を噛み締める様に言う・・・。
「角さんは無償の施しが嬉しかったそうだよ?」
「悲しいです~センパイ、せっかくのマツエクがあ・・・イ、イエ! ロマンスがあ~。でもお父様、キャッチャーやってたんですか?プロ野球の。」またか・・。アホと想っていた。
「キャッチャーじゃないよ、保守だっちゅうの! いいんだ、こっちが先走っても何も動かないからな。」
「だから正々堂々と寿命を全うしていれば真実がやって来る。」
「そう言うもんだ世の中ってのは・・・な麗奈?」
「センパイ、お母さんみたいですぅ~。」
「うんマァその、慇懃無礼な小娘だな、マァ、その・・・、ニッポンは病に犯されとる。うーん・・・。」
「ワシは、日本を発展させるために、カネをばらまいちゃあイカンかった。」
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