第23話 ナースのお仕事

 一方、絶望的な麗奈の心持ちは今にも崩れ落ちそうだった。

 背中にナイチンゲールを背負い、胸にナースのお仕事と言う夢と憧れを抱きながら半年前当院に入職して来た。

「巻き巻きロングでは仕事にならないから後ろで結わえなさい。」

 先輩ナースの言う通りストレートのポニーテールにした。

 患者がリラックス出来ればと、私はスキンシップから常に笑顔を全面に出して尽くして来たのに!

 

 鈴蘭医科大北医療センターの朝は早い。

午前7時、バイタル測定の器具を揃えつつカートを押す内並木麗奈(うちなみきれいな)は313号室へ入室した。

「おはようございます、北条ケンさんお熱を測りますね。」ピッ!電子体温計を耳の裏で測定した。

「36.5度ですねー。」

「凄く可愛いね、マツエクしてるの?」気付いた患者に微笑み返し、「そうなんです、それは誰でもしているんだけど今度のは、新製品なんですよ?」

「じゃあリハビリは9時半からですね、頑張ってくださぁい?」両膝を折り小首を傾げて可愛らしくお辞儀をし、病床を離れた。胸を掌で押さえていた。

「朝イチから理学療法か・・・、今日も暑いな。」

 浮かぬ顔の北条犬(ほうじょうけん)は、49歳で脳出血を患い左半身麻痺の後遺障害を負っていた。

 5月19日の今日で9年目だった。

 

 そしてマツエクサロン。

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