第15話 池永奈緒美のメリークリスマス
奈緒美が来てくれた事が安心したかのようにスースーと軽い寝息を立て微笑みながら熟睡していく庄屋三咲だった。
窓の外には粉雪から大粒のボタン雪へと変わり、ホワイトクリスマスとなった朝・・・。
赤い帽子を被りサンタの白髭を付けて現れた池永奈緒美だったが、悲しいかな黒髪のストレートにはお似合いではなかった。
「サキが総理大臣かよ!?」眼球が飛び出さんばかりに驚いた池永奈緒美が三咲のベッドの傍らに佇んでいた。
「んで、アタシが暴走大臣か?」
「そんなもんあるかよ。防衛大臣だよ。アタシが総理になったらまず推薦はしないわな?」プッと吹き出しながら三咲の電話相手にリアクションしていた。
「ジョークさジョーク。」尻に両手を当てて弁解した。
「いやいや、主治医に薦められたんだナオッチ?」いつになく饒舌な直美を見詰めていた奈緒美に話し続ける。
「アタシは女だから誰にも何処からにも、マークされてない。」
「ツマリ、ササッと裏から手を回してササッと立候補してしまう訳だ!」
「女性総活躍時代だからな。」ベッドのフェンスに手を掛け、屈伸をしながらモノを言う・・・。
「緑のおばさんの都知事みたいに新党を作るんだろうが止めとけ、ロスチャイルド家がサキの敵になってサキの眼前に立ちはだかっても助けてやんないぞ?」屈伸を止めてベッドサイドに立ち腕組みしながら腰をベッドフェンスに預けた池永奈緒美が呟いたとき、ガバッ!と跳ね起き「痛て、ててて!」
「よく知っているな、ナオッチ?」三咲が奈緒美の顔を見上げた時、奈緒美の毛髪にキューティクルがツヤツヤと黒光りのストレートロングヘアーがガンメタ色に発光し、緑のオーラを形成していた。
スーパーなんとか人みたいだと、見詰めている三咲に、「勉強しろよなオマエ、常識ダゼ?」勉強アレルギーの三咲は政治・経済の書物を子守唄がわりにしていた。
「どうやって勉強するんだ?」端的に素朴な万人でも理解できる、よくある質問だったが、「じゃあな、また来る。」左手の肘折れで手を挙げて背中でアバヨと言っていた。
「雪が積もってるだろナオッチ?」病室の窓は北側の壁に採光を設けている。
気いつけて帰れ! と、いいかけたがもうニーハイブーツのヒール音を残して影も形もなかった・・・。スノータイヤだよー。と、歌う様に行ってしまった。
思えば一年半前、彼女とは敵対していたが腹心の友になるのも簡単だった。
天井を観ていたが三咲と奈緒美のレビューが映し出されていた・・・。
一年半前鈴蘭の丘、夏。
カーン! カーン!・・・
大型重機のパイルドライバーが鋼管杭を叩き地中深く打ち込んでいた。約20m深くに。
「オマエ、叩きのめしたるッ!」拳を前に構えて威嚇する三咲を物珍しそうに見詰め、「隙だらけだな。」奈緒美の直感だった。
戦闘モードでにじり寄る二人の背後では無音の中型バイクと、大型バイクが二人を静観していた。
「1分だ!」右人指し指をピン!と立て指を伸ばし風を読む・・・。
「ゴルファーかっ!?」
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