第12話グッジョブ盲腸炎!
布団を頭から被る。
しかし、ケンの笑顔や間抜けな表情が浮かんでは消え消えては浮かび、諦めたか頭を出して東すずらん総合病院の個室ベッドに仰向けに寝た。
テンカセから暖かい空気が流れ出ている。
スルスルと、音もなく病室の片引きドアが開いた。
全ての病室のドアは片引き戸だ。
「ドラマチックだね、イブの夜に盲腸炎だなんて。」
「お父さんに連絡付いたからお正月にはメデタく退院できますよ、庄屋三咲さん?」
ニコニコとした面持ちの丸い銀縁の眼鏡をかけた丸顔な頭ツルツルの小太りが白衣を着た主治医が低身長の男で後ろ手を組んで立っていた。腹は出ていたが、愛嬌があった。
そして主治医の背後からベテラン風の看護師がバイタル測定の器具を乗せたカートを押して佇んでいた。
「テレビつけてくれセンコー?」ティーンエイジャーなのに偉そうだった。
「は?」ニコニコ顔が消え言われている意味さえ判りかねる。
そういった表情でを三咲を見ていた。
「あ、ハイハイ、テレビね庄屋さん?」そう言った看護師の彼女は、三咲の顔を見ないでテレビリモコンのスイッチを手際よくオンにしていた。
「ニュース速報をお伝えします。日本のGDP(国内総生産)が中国に抜かれ世界第3位になりました。一位のアメリカGDPは19兆4854億ドル、二位の中国GDPは12兆146億ドル、そして三位に甘んじた日本のGDPは4兆9732億ドル。」うーんと、皆が皆、微妙な感心の仕方をしていた。
「これと連動したかにみえる政府与党では入管移民難民法改正法案を提出し、野党が牛歩で抵抗する中、強行採決を実行し可決されました。これに反発した全野党は・・・。」ミッドナイトニュース23という深夜の報道番組が、日本の行く末をリアルタイムで報道していた。
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