第11話 二人乗りの愛
「普通のケンが好きだよ?」東山と湊川の間にある大きな公園で自転車の二人乗りをしていたケンは、「エッ?なんか言った?」バコン!「二回も言わせるなボケ。」素の三咲は手強かった・・・。
「イッテエ?。」と言いながら荷台の三咲の胸の膨らみと熱い鼓動のノーブラのトキメキを背中で感じ取り、三咲の体温と果てしない感触だけが、ケンの今生きている刹那の証だった。
ケンと三咲のパルピテーションの中の熱いシンパシーが育ち始めていた。
それは永く続く筈だったが、公園での自転車二人乗りを境に池永奈緒美からの二人の支持率は急落・・・。
「なんで、サキがブサオと遊んでいる訳だ?」
「サキのチーム愛とブサオへの愛が拮抗しているかもだよ。」
「示しが着かん!別れろ。断交だ!」とでも言われたのか、三咲の考えは卑屈になって行った。
「アタシと付き合えばケンに迷惑が掛かる。レディースを脱退若しくは解散させよう・・・。」窮地に追い込まれていた。
池永奈緒美(いけながなおみ)はUSAのジェニファーロペス張りの高身長に切れ長の両脚、離れた眉根とキリッと締まった長い眉毛が広い富士額の演出をしていた。
そして、鋭利な下顎の顔立ちが輪郭が鮮明に存在感を際立たせていて、腰までの黒光りするロングストレートは遠目に見ても判然と佇まいが視認出来るからバリカーの上に腰を降ろし、背中を丸めて存在を消してはしゃぎ回る二人を観察していた。
「ケンと別れて総長を引退して、紅生姜を解散させろよ?」座っても池永奈緒美はと三咲体格差があった。
座高を伸ばし、足を広げ両手を膝上に置き三咲を見下ろす格好になっていたが、三咲は核心を突かれるのをおそれているかの様に縮こまって俯き両手の指を組んで膝上に置いていた。
時々指を絡めたり、モジモジしたりして頬を赤らめ、口を動かし何かを言おうとして奈緒美を見たがその迫力に圧倒され少女の様に肩を竦めすぐさま俯いた。
こんな不祥事にはキッチリとケジメを着けさせる。
例え配下チームの総長であっても! これが池永奈緒美流の政策だった。
テコンドー2段は、三咲を遥かに凌ぐイージスアショアの様な戦闘力の持ち主で、庄屋三咲が弾道ミサイルならば、迎撃100%のトマホークの対決は大人と子供の戯れに過ぎず三咲は池永奈緒美の足下に及ばない実力だったが、三咲の流した血と涙は、何故別れなきゃならん?愛していたのにラブだよラブ!・・・、それに何故歯が立たない?
チームからのリンチを抑制の為の一芝居だったが、今度だけは痛み分けに持ち込みたかったダケに、大勢の部下の前に一撃で倒されては、紅生姜の総長としての威厳がなくなるじゃないか!?いや、もはや総長は引退したが・・・。
ケンと別れたくはなかったし卒業まで続いて欲しかった。
手編みの白いセーターをアタシだと思って着てくれているかな?
例えレディースの総長であっても乙女心を持ち合わせていた。
フッ! 笑いが独りで出た。
「あー、もうッ! やめヤメ!」
布団を頭から被る。
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