第8話 クリスマスの劇痛!

 バゥン!

バンバンバンバン!ドドー! 弾道ミサイルが一列になり巡行している様だった。

 一撃で庄屋三咲を沈めた池永奈緒美に屈服し、追随していた。

鵯越墓園の闇に抱かれた三咲の涙は止めどなく・・・、溢れ流れていた。

 北風に吹かれた三咲の耳は冷え固まり指で触っても分からないくらいに冷え、痺れていた。

「ケン、思い切り好きだ!ライクじゃあ無い、妻になりたいよ・・・。でも、ダメなのよ、バイバイ・・・。」意識が遠のく庄屋三咲、十七歳の年の瀬だった・・・。

粉雪から灰雪になり、やがては粒の大きい綿雪となり、音も無くしんしんと降り積もる。時々、ふわっと北風に浮き上がったかと思うとストンと堕ちる。直美の身体に寄り添った・・・。

 ビュルルー、からっ風が三咲の涙と呟きを拐って行った。

 仰向けに倒れた赤い革のライダースーツにはクッキリふっくらと、胸の膨らみの丘が外灯に晒され光と陰のコントラストを形成していた。

 北風が三咲の腹を舐めた刹那、いきなり下腹を押さえ「いってエー!ウグッ!」悶絶する三咲は溜まらず尻ポケットからポケベルを取り出し、0848451(オヤジハヨコイ)と助人を呼んだ。


 パン、パパパパン! 「メリークリスマス!」

イブの夜にケンの自宅リビングで一人浮かぬ面持ちを浮かべて、タータンチェックのような刺繍らしい毛糸のマフラーを手に持ち、見詰める様にぼやけた視線を向ける北条ケンは、「サキ・・・。」

 ハアー、とリビングのフロアーにへたり込んでおにぎりの様に膝を曲げ抱えて座り、正三角形を形成していた。

 ラジカセから流れる(チャンピォン)のBGMに漂うケンの青春時代は過渡期を迎えていた。

「カラアゲ好きぃー!・・・。」同級生の女子がはしゃぐ・・・。

 何も知らない同級生がケンの家族と共にはしゃいでいたが、ケンはこれまでの時系列を振り返れずには居られなかった。

 出会いは軽音楽部の朝練が終わった夢の町商業高校(ゆめのまちしょうぎょうこうこう)2年5組の学級編成のあった翌朝の教室だった。

 長身の庄

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