第3話 月は観ていた
ギュルルンドッド、ドドッ!
駐日イギリス大使の夫の元へすぐ帰ると言い、「今年の走り納めだ、ロッコウ!」 バォンボォー! フィリップ・イケナガナオミ所有のスピードスターが滑る様に闇に消えて行った。
1978年12月クリスマスイヴの夜。
「ケン、ケンの妻になりたかった・・・。」疼く腹を押さえ嗚咽の口を開けるまいとして抗うが、それでもユルユルとリップが歪み歪んだ口をただただ、憚らず泣いていた。
迸る嗚咽に溺れていた。
子供のように、叫ぶように・・・。嗚咽が零れる。
止め処なく溢れ来る涙にキッパリと過去を断ち切る孤独の少女が寒空の下、冷気に抱かれていた。冷徹なアスファルトが痩せた背中を凍らせる。
上空のギャラクシーが凍って、消し忘れたダウンライトのような満月が、ハッきりと三咲を見詰めていた。
その2時間前・・・。
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