第二曲 第七楽章 ソウルレッド 北歌音駅西口前の大学の屋上にて

 四人が時間を稼いでくれたお陰で、俺は何とか本物のGの玩具おもちゃを見つけ出す事が出来た。が、正確には

 「この風雅ふうがのお陰で、思ったより早く見つけ出した訳だ!」

 と、風雅の頭をポンポンと叩きながら自慢気に言明した。風雅はちょっと嬉しそうにほほを染めていた。






 俺はあの時、大行進しているGの群衆の中でたった一匹だけ不自然に動きがにぶくなっているGを発見した風雅に教えて貰い、タイミングを見計らって水門の上から飛び込んだ。俺等は上手く本物のGの玩具の上に着地したが、俺にしがみ付いていた風雅は一瞬止まったGのせいでバランスを崩し、後列のG共の渦中に落ちそうになったので、必死に左腕を伸ばして彼の手首を掴んだ。

 「しっかり摑まれ!!そのまま俺のそばから離れるな!!」

 何とか引きり上げた所で、ソウルタクトでGの羽の付け根を目掛け、力強く突き刺した。次の瞬間強い光に包まれ、周りにいたGは灰の様に消え去った。あまりの眩しさに思わず目がくらんだ。




 ……




 目を開くと、俺と風雅は道のど真ん中で寝ころび、彼の手元には一つの小さなGの玩具がころんと転がっていた。

 俺にとって今までの中で人生最大代の賭けだったが、一先ひとまず何とかこの町を護り切った。今までに無い過酷で恐ろしい戦いだ。






 「まさか本当に見つけ出すとは…ソウルレッド、私は君をあなどっていました」

 少々関心しながらダルジーニが俺に向かって叫ぶ様に言った。

 「ふん!俺に掛かればこんなもんだぜ!」

 「とか言ってるけど、あんなに見栄張る事なくない?」

 「それな。普段はどうしようも無い癖に」

 「おいお前等!さっきから何俺をディスってんだよ!俺が戻ってくる前も散々バラしやがって!!」

 「あれ、聞こえてたのか。てっきり通信切ってあると思ったのに」

 「俺には丸聞こえだったんだよ!!」

 両耳にあるでっぱりの部分は通信機能が搭載しており、他国の言葉の翻訳の可能となっている。この機能はオンオフ切り替えられるが、ソウルイエローとソウルピンクは通信を切っていなかった事に気付いて無かった様だ。

 「とりあえず落ち着いて下さい!ずはこの子を安全な場所へ避難させましょう!」

 ソウルグリーンが俺の元に駆け付け、隣にいた風雅を連れて移動した。

 「…フィーネント、今日こそ決着付けてやる!」

 「フッ!望む所だ!だがその前にこれを見よ!」

 と言って、フィーネントのふところから出したのは、何処どこにでも販売している何の変哲も無いただの白紙のCDジャケットだ。が、そのジャケットを見て思い出した。

 「!!それ、スタヤのCDコーナーで見た白紙のCDジャケット!何でお前が持ってんだよ!?」

 「ソウルレッド、知っているのですか!?」

 ソウルブルーが力づくで上半身を起こしながら俺に尋ねた。

 「ああ!あの時クラシックCD探してたら一枚だけ見つけたんだ!何の曲が収録されてるか思い出せねーやつ!…!!お前もしや!!」

 「フフフ…察しが良いですねソウルレッド。そのCDは先日ちょっとした実験と称しまして、わたくしが開発した『歴史改変装置』でフィーネントが最も嫌うクラッシック曲をこの世から消去致しました。しかしながらその装置は壊れてしまい完全修復までは約三年かかると判断した為、他のジャンルの音楽は先程のゴキブリの玩具を利用し、歴史を跡形も無く残さず食べさせました」




 プツン。




 それを聞いて俺のおつむが切れた。




 「貴様あああああああああああ!!ただそれだけの為にGを利用してまで侵食したとでも言うのかああああああああああああああ!?」




 ピリリッ




 今の激しい頭痛で忘れていた何かが思い出せた。が、今はその事や今日一番の頭痛に関してどうでも良い!




 俺は奴等に向けてソウルタクトから光線を乱射した。この際周辺の建物の破壊とかどうでも良い、奴等を倒せばそれで良い。

 「何やってんのソウルレッド!!そんなんじゃ町の被害がどんどん酷くなっちゃうよ!」

 「…無駄ですよソウルピンク。ああなった以上、僕でもソウルレッドを止めるのは困難ですから」

 ソウルブルーは諦めを察してソウルピンクに言った。

 そんな二人のやり取りには聞く耳を持たず、お構い無しに奴等に乱射する。が、当たるどころか二手に分かれていて全く仕留める事が出来ない。

 「甘い!貴様の実力はそんな物か!?」

 フィーネントが放った魔弾が俺の背後に当たり、雷に打たれた鳥が落て行く様に駅の屋根に撃ち落とされた。普通の人なら即死だが、この痛みは下手をすれば重傷一歩手前のレベルだ。




 「あっ!ソウルレッドがやられちゃった!」

 「!?」

 ソウルグリーンに抱かれて避難している風雅は俺と奴等の激戦を終始見ており、撃ち落とされた瞬間に叫んだ。

 「…ねえ、ソウルレッドは負けちゃうの…?」

 風雅は不安気になってソウルグリーンにいた。

 「…大丈夫です。ソウルレッドはこの程度で諦める人ではございませんから」

 ソウルグリーンは一切俺等の方へ振り向かず、駅と直結しているデパートの屋上へ跳んだ。




 …体が重くて思う様に動けない。それでも此処ここで立ち上がらないと、奴等の思う壺だ。早く侵攻を止めなければ…!

 「貴様、そんな戦い方で我輩を倒すつもりではあるまいな?」

 ダルジーニが冷たい表情をして直言した。俺は無理してでも重い身体を起こしながら、フィーネントに尋ねた。

 「…っ、てめえに訊きたいことがある。さっき『ゴキブリを使って曲を食い荒らした』って言ったよな…?まさか全ジャンルの曲むしばんだ訳じゃあねーだろうな?」

 俺の質問を聞いたダルジーニがフィーネントに変わって答弁した。

 「ご安心ください。今回もまたちょっとした実験であって、全てのジャンルを食べさせた訳ではありません。…まあいずれ全ての音楽を掻き消すつもりではありますがね」

 ここでフィーネントが嘲笑しながら付言した。

 「我輩はこの世の音楽という物が嫌いだ!だがその中でクラシック音楽は我輩にとって最も耳障りだ!だからこの実験で全てのクラシック音楽を抹消出来るかダルジーニに頼んで試してみたと言う事だ!!ハハハハハ!!このジャケットに記されている曲名やCDに収録されている曲が無音と言う事は、どうやらこの実験は成功した様だな!!」




 プツン。




 「…おいてめえ等、何がそんなに可笑おかしいんだよ」

 奴等に対する恨みはより一層根深くなり、これ以上無い瞋恚(しんい)という物が俺の中で覚えた。

 「あっ、これは不味いですね」

 「あたし、知ーらないっ!」

 「あいつ等やっちまったな。ソウルレッドの前で音楽を侮辱するとソウルブルーでも手に負えない程の怒りを買っちまった事を。特にクラシック音楽は思い入れのあるもんだから余計やべーぞ」

 ソウルブルーとソウルピンクはコソコソと物陰に身を隠し、ソウルイエローもその場から静観しながら呟いた。











 「この世の人達は皆大抵歌詞と歌がある音楽を聴いて、傷付いた心を癒したり、元気を得て前向きになったり、その曲が好きになって歌詞を覚えて自ら歌う事もあるんだ。活気あふれる明るい曲、清々しい爽やかな曲、何処と無く物寂しげな曲、季節に合った曲、作曲者によって色々な個性があるんだ。クラシックだって同じだ。多数の楽器の音色が合わさって表現出来る豊かなオーケストラ、曲だけでなく物語の登場人物の心情も描かれるオペラや歌劇、作曲者が手掛けた曲にはその人自身が込められた熱い情熱があるんだ!勿論演奏者も弾き手が違えばその人にしか出せない音色や表現も違うんだ!!」

 やっと重い身体を起こして立ち上がり、奴等に歩み寄りながら続けた。

 「それとてめえ等、同じ曲を弾いても弾き手によって音色の違いを比べた事ねーだろ?例えばアマチュアのピアニストと、超有名なプロのピアニストが楽譜通りに演奏するだろ?するとどうなるか?アマは少し不器用な部分が出て来るが、プロは屈託も無く一流を感じさせられる様な音色を出すんだ。要は、欠点の部分も含めてプロにはプロの、アマにはアマにしか出せない音色を出す事が出来るんだ!俺の持論から言うと、クラシック音楽は俺の人生の一部だ!!」











 「この情熱が籠ったクラシック音楽を侮辱する奴は誰であろうと俺がぶちのめす!!」











 次の瞬間だった。左腰の小さなポーチから突然強く赤く光り出し、その光は俺ごと包み込んだ。あまりの眩しさに思わずぎゅっと目をつぶった。






 ……………?






 恐る恐る目を開くと、あの時と同じ真っ白な空間にいた。

 俺は眠ってもいないのに、また夢の中にいるのか…?

 「安心したまえ。君にはこの力を使うと良い」

 背後から聞き覚えのある声がした。振り向くと、何時いつの間にかバッハの姿があった。

 「うわっ!バッハ!どうして此処に!?てか『この力』って何の事だ!?」

 あまりにも突然だったので、数歩後退りをしてしまった。

 「ちょっとだけじっとしてくれ」

 バッハが俺の左腰の小さなポーチを指すと、腕をゆっくりと上げたと同時に、ポーチから勝手に二枚のソウルレコードが出て来た。まるでサイコキネシスで操ってるかの様にソウルレコードを誘導し、彼の手元に寄って行った。

 「…そっ、それをどうするつもりだ!?」

 疑心暗鬼になりながらもバッハに尋ねると、彼は落ち着いて答えた。

 「この二枚のソウルレコードにちょっとした能力を与えるのさ。こうしてな」

 バッハが指をパチンと鳴らすと、二枚のソウルレコードは赤い光を放ちながら俺の元へ戻った。

 「…これ、どうやって使うんだよ!?」

 「ソウルタクトにセットすれば分かる、後はどう使いこなすかは君次第だ」

 そう言いながらバッハは俺に背を向けて何処かへ消えてしまった。俺はまた光に飲まれて再度強く目を閉じた。






 ……………。






 目を開くと、俺の右手には二枚のソウルレコードを手にしていた。

 「…成程な、俺の力とバッハの力、ハモるぜ!」

 二枚のソウルレコードを握り締めながら呟いた。一方駅の屋根の端で一部始終強い光を目撃していたダルジーニとフィーネントは動揺しながらも再度戦闘態勢に入った。

 「一体何が起こったのかは定かでは無いですが、さっさと終わらせましょう!」

 「言われんでも分かるわ!!行け!マイナリー!!」

 ダルジーニとフィーネントの手から幾多のマイナリーを召還し、俺等に襲い掛かった。

 「…見せてやる、俺の音楽魂ソウル・ムジークを!!」

 二枚の内『Ⅰ-Ⅱ』と記されているソウルレコードをソウルタクトの持ち手の上にある円盤台にセットし、三つのボタンの中から上のボタンを押した。






 『Musik Attack! Bach!』

 「バッハ『トッカータとフーガ』!!」






 ソウルタクトの先端までゲージが溜まり、俺は呪文を唱えるかの様に台詞を続けた。

 「『凶悪な魂に絶望の業火を与えん!』」

 その瞬間、ソウルタクトから強い勢いで火炎を放ってマイナリーを焼き尽くし、危機一髪で大群の来襲らいしゅうから逃れる事が出来た。

 「すげえ…まるで魔法使いみたいだ」

 ソウルイエローが唖然としながら物陰から出てきて俺を見ていた。

 「さっきの光の中で何かあって、それでこの力が使えるようになったんじゃないかな…?」

 ソウルピンクもざっくりと解釈しながら同じ様に俺に見とれていた。

 「二人共油断しないで下さい!!僕等の所にも沢山来ます!!」

 ソウルブルーは二人に襲い掛かりそうなマイナリーをソウルタクトで倒しながら言った。

 「うわっ!何時の間に!?」

 「これじゃ倒してもきりが無い!うじゃうじゃと来るぞ!!」

 二人もさっと身をかわしながらソウルタクトを振って一体ずつ倒すも、数は徐々に増えていくばかり。

 「もう!こんな時にソウルレッドは別の奴を倒してるし、ソウルグリーンはまだ戻って来ないし!」

 マイナリーが増え続けるお陰で、溜まっていたソウルピンクの鬱憤うっぷんが遂に爆発した。が、丁度その時だった。




 「説明しましょう!!」




 何やらやけにテンションが高い状態でソウルグリーンがこちらに飛んで戻って来た。

 「おい遅いぞソウルグリーン!何モタついてんだよ!」

 「『トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565』は1704年頃に当時二十一歳だったヨハン・セバスティアン・バッハが作曲したとても有名なクラシック音楽の一つです。この曲は、オルガン奏者兼作曲家のブクステフーデの派手で豪快な作風に強く影響を受けた青年期のバッハは、彼の師事後頃に終始バッハの情熱がこもったこの一曲を制作されたのでは無いかという説があります。因みに『トッカータ』は主に鍵盤楽器による、速い走句(パッセージ)や細かな音形の変化などを伴った即興的な楽曲、『フーガ』は複数の旋律せんりつをそれぞれの独立性をと保ちつつ、互いによく調和して重ね合わせる技法が特徴的な音楽理論の一つ、対位法を主体とした楽曲形式の一つの事です!」

 珍しく饒舌じょうぜつなソウルグリーンが妙なハイテンションを保ちながら流暢りゅうちょうに説明し、終えると何故か誇らしげつやり切った感が見られる。

 「て聞いてねーし!!」

 「てか、誰に説明してんの!?」

 ソウルイエローとソウルピンクがマイナリーを倒しながら突っ込んだ。

 「ほらほら!油断してると君達までやられてしまいますよ!」

 「だから俺等の話聞けって!!」

 それでもそのテンションで華麗に敵の攻撃を躱しつつ、ソウルタクトから光線を放ったりして倒してる。

 「…っおのれソウルジャー!!こうなったら…マイナリー!!」

 怒りの頂点に達したフィーネントは指をパチンと鳴らし、まだ残っている幾多のマイナリーを集合させた。集合したマイナリーはスライムの様に融合すると、全く違う生物となって約五十メートル程の巨大怪獣並みの大きさになった。

 「うげっ!こんなのアリかよ!?クソデカいし!」

 「予想外です…。僕の推理が正しければ、放置すれば約五分で駅周辺を破壊出来るでしょう」

 「感心してる場合じゃないでしょソウルブルー!!早く何とかしないと此処が焼け野原になっちゃうよ!!」

 「何とかって、どう倒せば良いんだよ!」

 俺だけで無く、他の四人も愕然がくぜんとしていたのは言うまでも無い。

 「数多あまたのマイナリーが融合するとネオ・マイナリーになり、マイナリーの数千倍の力を発揮するのだ!貴様等の攻撃なんざそう簡単に効かぬわ!!」

 と、フィーネントは怒鳴る様に嗤笑ししょうした。ネオ・マイナリーと呼ばれる巨大生物は近くにある雑居ビルを無差別に破壊し始めた。

 「俺に任せろ!考えがある!一か八かで賭けてみる!」

 奴を倒す策など考える暇は無い…と言うよりも全く考えてない。が、俺の直感では倒せると確信した。

 「考えって、まさか一人で挑むつもりでは!?」

 「その「まさか」だソウルグリーン!此処にもう一枚使ってないソウルレコードがあるだろ?これであいつを小さくしてみせる!!」

 「またそんな無茶な事を!本当に命堕としたらどう落とし前付けるつもりですか!?」

 「ソウルブルー、俺を信じろ!こういう時こそ何事にもポジティブに考えるんだ!」

 ソウルブルーは俺の確信に負け、渋々と考え直した。

 「……、分かりました。ただし、絶対に無理はしないで下さい!」

 「おう!頼むぜ!」

 俺はさっと離脱し、ネオ・マイナリーの正面へと回りこんだ。

 「おいバケモノ!!俺を撃ってみろ!!」

 ネオ・マイナリーは俺に気付き、攻撃態勢に入った。その状況を見たフィーネントとダルジーニは勝利を確信した。

 「フッ、馬鹿め!!仲間を見捨てて一人自ら死を選ぶとは!」

 「我々の出番はここまでの様ですね。戻りましょうか」

 勝利を確信したフィーネントは嗤笑し、ダルジーニはその場を後にしようと背を向けた。

 「待つのだダルジーニ。ここはソウルレッドが完全にくたばるのを見届けようではないか」

 「…それもそうですね」

 ダルジーニは少し考えながら再度見物する事にした。

 ネオ・マイナリーは俺に攻撃しようと光線を溜め込み、俺もろとも排撃はいげきしようとしている。その一歩手前で、ポーチから『Ⅰ-Ⅰ』と記されたソウルレコードをソウルタクトの持ち手の上にある円盤台にセットし、三つのボタンの中から下のボタンを押した。






 『Musik Heilung! Bach!』

 「バッハ『G線上のアリア』!!」






 ソウルタクトを上へ投げると、赤いフルートへと変化し、それを上手くキャッチした。俺は再度呪文を唱えるかの様に台詞を続けた。

 「『火炎の翼に包まれ凶悪な魂を鎮めん!』」

 フルートを構ると、無意識に曲を弾き始めた。すると何処からともなく炎を纏った一羽の巨大な鳥が現れ、大きな翼を広げた。

 「これはすげぇ…。こんなに鮮麗せんれいな火の鳥は初めて見た…」

 「これが…ソウルレッドと契約した守護霊…」

 ソウルイエローとソウルピンクはあざやかな火の鳥に見とれ、思わず本音を吐露とろした。

 「また説明しましょう!『G線上のアリア』とは、ヨハン・セバスティアン・バッハが作曲した『管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV.1068』の第2曲『エール』をアウグスト・ウィルヘルミというドイツのヴァイオリニストがピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏の為に編曲した物の通称で、このタイトルはウィルヘルミが編曲に際してニ長調からハ長調に移調した為、ヴァイオリンの四本の弦の内最低音の弦、G線のみで演奏出来る事に由来するのです。ここで豆知識!BWVとは、ドイツの音楽学者、ヴォルフガング・シュミーダーが著したバッハ作品主題目録で、バッハ自身による番号付けでは無く、シュミーダー氏が独自に付けたナンバリングの事です。多くの作品を間違え無く表記出来るため出版や研究での引用、放送時の曲紹介などで併記されています。あ、分かっているとは思いますが、G線上のGとは皆さんが嫌いなゴキブリのGとは全く関係ございません!」

 再度ソウルグリーンが妙なハイテンションで流暢に説明した。

 「だから誰に向かって説明してんの!?」

 「つかそのテンション、疲れない?」

 ソウルピンクとソウルイエローが呆れながらソウルグリーンに突っ込んだ。

 「僕もイメチェンしてみました!個性だけですが!」

 ソウルグリーンがそのテンションで自慢気に言った。

 すると火の鳥は広げた巨大な翼でネオ・マイナリーを優しく包み込んだ途端、奴は激しい炎をまとった火達磨になり、だんだんと小さくなって俺等と同じくらいの大きさに縮小された。

 「これが…ソウルレッドとバッハの新たな力ですか…」

 ソウルブルーが驚嘆きょうたんしながら呟いた。小さくなったネオ・マイナリーはかなりのダメージは受けているものの、これでもかと言わんばかりに暴れている。俺は奴のしぶとさに呆れながら四人の元へ戻った。

 「チッ!中々手強いぞこいつは!!奴に弱点とか無いのか!?」

 するとソウルグリーンがある部分に注目した。

 「!!あそこをご覧下さい!巨大な口の上にある小さな眼を!」

 「成程、理解致しました」

 「どゆこと?」

 ソウルイエローとソウルピンクが首を傾げると、ソウルブルーが解説した。

 「僕の推理が正しければ、ソウルグリーンが注目したあの小さな眼に集中攻撃すれば、あの怪物を仕留める事が出来ると考えられます」

 「てことは、小さな眼は奴の弱点ってとらえても良いのか?」

 「確証はございませんが、やってみる価値はあると思います」

 「よし!だったら俺等で一斉攻撃だ!」

 俺等は横一列に整列し、小さな眼を向けてソウルタクトをガンモードに変形させ構えた。

 「ハモるぜ!!」






 「「「「「ソウルジャー・クインテットシュート!!!!!」」」」」






 俺の合図で一斉にソウルタクトのつばを引くと五色の光線は見事に眼に命中した。ネオ・マイナリーは俺等の攻撃にえきれず、その場で昏倒こんとうした。






 「お前の終止符はここだ!!finフィーネ.」






 ソウルタクトを一振りすると、やがてネオ・マイナリーは爆散しちりとなった。

 『ソウルジャー・クインテットシュート』は、俺等五人の攻撃技の中で相当力を消耗する為、戦闘を終えた後の体力の消耗は激しい物だ。

 「…っ!!おのれソウルレッド!!次こそは貴様を地獄送りにしてやるわ!!」

 フィーネントは歯を食いしばりながらその場を後にし消え去った。続いてダルジーニも無言で立ち去った。

 こうして再び北歌音に平和が戻って来たが、破壊された建物はどうする事が出来ず終いになってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る