剥がれ落ちる化けの皮

 近年では大分身近なものとなった、アバター配信者。


 有名どころだと、COVERとかANYCOLORとかの運営している団体ですね。別に素直に名前を出したっていいんだが、ここではなんとなく、非常に半端にぼかされるのである。どうせなら社名もちゃんとぼかせよという話だ。


 さておき、偶像アイドル業務というものは、昨今の印象に比べると――元より現実をしっかり見据えてさえいれば、そんな誤解をすることはあまりないのかも知れないが――華やかで、ある種の軽薄チョロさがあるように見えて、そこには厳然たる苦さ、大変さが伴うものだ。誰しも雑に人気者になれるわけではない。なんなら、なれるはずもない。

 アイドルは排泄行為などしませんみたいな、あからさまに冗談めかした言説の延長にある、凡俗を超越した才覚や振る舞いが、そこには求められている。本来不可能であるなにかを、さも可能であるかのように取り繕って、現実を覆い隠す表徴しるし本体ほんしつとする。その振る舞いは、正しく「人を超越する誰か」になることと言えた。


 ……みたいな、大袈裟な表現をするようなことが大前提にあると言うほどでもないのだが、それでも偶像が正しく偶像たるに足るためには、そこにまとう性質キャラクターの一貫性が大事になる。

 それは例えば、その人の見た目であったり、声であったり、物事の考え方であったり、他の誰かとの関係性であったり――語るべき在り方せっていであったりする。

 なかでも、設定はね。厳守してもいいし、半端でもいいし、単にという程度でも構わない。一方で、そのスタンスが変遷でなく、純粋にブレていることだけは認められない。超絶どうでもいいようでありながら、実のところ扱いが繊細なのが、伝説。語られる神秘性、設定という上位情報メタタグなのだ。


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 そろそろ本題に入るわけだが。

 夢日記とあるように、なにかしら夢を見たことで、この節は記されている。それを違えることは、基本的には有り得ない。勿論、見ている側からしたらそれが本当に夢なのか、それともフルスクラッチ作り話なのかは本質的にはどうでもいいのだが、私はフルスクラッチ作り話は得意じゃないんだよな。アレは話の作り方が根本的に異なるから、あまり気軽に出来るわけじゃないんだよ。


 だから、冒頭に書かれていたような、真偽も定かでないアイドル感の話は心底どうでもよく、精々が参考情報として扱われるものでしかない。



 まぁ、配信を見てたんですよ。夢の中で。


 内容? 特に知らない。そこまでの詳細ディティールは憶えてないし、なんなら可能性もある。夢の世界は曖昧なもので、あると思った印象が全てですら有り得る。

 誰がいたのかは、それも殆ど記憶している。名前を出す必要も(色んな意味で)ないので、巫女さんと白い狐の娘とだけ書いておく。その判断をした理由は正確には憶えていないが、印象としては声が大部分を占めていたかな。それでも「その人たちだった」という事実の認定は、見て捉えたというよりも、結論として既に把握していたという方が近い。これもまた「設定」だった、ということか。


 配信でなどはどうでもよくて、要点はの方なのだが、どうなったかというと、所謂いわゆる顔バレというやつですね。

 敢えて言うことでもないが、私はその巫女さんの実際の顔など知る由もない。故に、夢の中でその状態をのは、私が実際に知っている別の人だったと記憶している。ありゃ多分、友人Aだ。

 ……いや、友人Aえーちゃんさんのことじゃなくて。私の友人、京都住まいの人妻Aの方。


 その人妻Aも、別に「不美人代表」とかいう不名誉かつ失礼極まりない枠で採用されていた訳ではなく、人の美醜についてあまりちゃんと分かっているとは思えない私でも、十分「美人」といって差し支えない枠ではあるのだが。

 そこに象徴されていたのは、過去実際にそうであったのと同じく。彼女は――彼女の「顔」は、私にとっては「現実」の象徴だった。本来であれば顔を知り得なかった、画面の向こうの誰か。過度に美化された印象の、剥がれ落ちた実存。その実例が、私にとっての人妻A。

 全然関係ないけど、最近知り合いの人妻枠に、人妻Mさんが増えたな。そっちは個人的親交など無いに等しいので、友人Mとは言い難いが。ガチでどうでもいい。


 とにかく、アバター配信者の「中身を知る」ということ――より正確には、覆い隠された表層を剥がすことは、概ね悪い影響をのみ伴う危険性リスクでしかない。より深く相手を知るなどと言えば聞こえは良いが、それは見せたがらなかった何かを暴くことに殆ど等しい。侵略と言える。

 特に、基本的には有名どころのアバター配信者というのは、より好ましい表層を持つものなので、暴いた先に沿が居る可能性など、最早有り得ないとすら言えよう。……そりゃまぁ人の好みは人それぞれなんだが、そもそも「そういう配信」に顔を出している時点でお察しですよね?


 こんなことを態々わざわざ言うのもどうなのかとは思うが、声に惹かれ、綺麗に飾られた表層を眺めて無様に発情する、哀れな豚の如き存在が、それでも敢えて直視し難い現実の方に首を突っ込みたがる意味がわからない。偶像アイドルって、そういうのじゃないじゃん。


 結局は、見世物となっている誰かを見下して、現実の劣化版、あるいは廉価版として誰かを見据えている、明らかに好ましくはない事実を認めなければならない。あの娘なら俺にも手が出せるはずだ、とか考えるほうがおかしい。失礼じゃん、そういう発想自体がさ。



 そんなわけで、現実なんて目にしたくもないのに、現実のくびきから逃れられない我々に。性愛を求めながら、誰かにそれを求めることが出来ない、魅力に乏しい性欲の奴隷どもに、こんな言葉を贈るとしよう。


 バーカ!!! キンタマ!!! 陰茎が本体の猿もどき!!!


 そんな感じで、努力したがらん割には「誰かには認めてほしい」なんて思うから、お前らはそんなんやねん。可愛い誰かに好かれたいなら、になろうとせえ。稼得かせぎでも格好良さでも、性格じんかくの良さでもなんでもええわ。むしろ全部や。



 そういう現実を忘れて夢ににげるなら、現実のことは忘れていられればいいのにな。これだから、物理的実存いのちに縛られる我々は困る。

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