会議室にて駄弁は奔る

 それは、そこそこ大きな白い机が真ん中に置かれた、広めの会議室での話だった。しっかりと詰めて掛ければ――二十名くらいは入るだろうか。長辺に六名、短辺に四名くらいが収められる、そんな感じのサイズ感。


 多分そこそこ真面目な目的のために、そこに召致されていたであろう私は、表題タイトルにも書かれている通り、後輩属性のある奴と、只管ひたすらに駄弁を弄していた。マジで何をしてるんだよ。


 先に述べた通り、能力を限界まで発揮すれば二十名程度を収容可能な会議室ではあったが、実際にそこに居たのは、合計すれば六名程度だったように思う。派閥ファクションの異なる二名ずつが、一つを除いてよくわからん位置関係で座っていたはずだ。


 まず、私。部屋の入口から見て左側の奥の片隅、そこそこ上座にいた。外部の人間な上、身分が別に高くもない分際で居る場所ではない気がするが、それはよくて。私からの認知としては、部屋の奥の方から前を見て、「部屋の右下側のすみの方」にいた、ということになる。

 続いて、後輩属性の彼。理念イデアとしては、高校時代の部活の後輩――やや丸い形の茄子なすびのような頭で、割と愛嬌のある顔立ちをしていた気がする。具体的には、少年アシベのゴマちゃんの飼い主、名前なんだったか。そんな感じのイメージ。三次元リアル実存なので、あそこまで可愛らしくはないが。――と、今一緒に働いている現場の後輩を抽出物エッセンス程度に加えた、構成全てが「後輩」という概念の存在。

 これら二人を組み合わせて、「技術者」派閥としておく。とはいえ後輩くんの構成要素は高校時代の後輩にほぼ全てを由来するので、あまり技術者感はないが。名字でいうと増田マスダだったかな。どうでもいいけど。増田くんは私から見て左側の短辺の手前寄りに居た。結構遠い。

 

 片端から忘れていくので、興味がある方から書いていく。私から見て右奥のすみ辺りに掛けていたのは、穏やかでうるわしい女性二名。これを……なんだろう。「おんなのこ」派閥とでも言っておくか。今後使われるかでいうと使わんとは思うが。

 右側の短辺側、相対的に私寄りの位置に掛けていたのは、FF14においてララフェルの姿を持つSさん。現実で姿を見かけたことはないので、かなり意味ニュアンス 的な存在だったように思う。なんなら、実は別の人だった……とかすら有り得る。どちらにせよ、私が好ましいと感じる声や見た目ビジュアル、性格を有する「好ましさ」の概念に充てられる人だっただろう。

 そしてもう一人は……。あんまり容姿的なことに触れることは出来ないが、取り立てて綺麗とも可愛いとも言うことはないような、普通の「どこかで見たことがある」ような感じの人だった。人物評としては失礼が過ぎるが、特に言いはしないというだけで、その他大勢エキストラへの評価など、所詮その程度である。

 そんな程度の認識の彼女は、もちろんSさんの取り分け仲の良い方(Gさん、あるいはNさん)ではない。属性としては「ただの女の人」だったに違いない。


 そんで、残りは「客先のおじさん」派閥。位置的には増田くんを挟む形で、私と同じ長辺、外側寄りに一人、対面側の長辺の中央寄りに一人。物語はなしの筋としてはむしろ最重要人物であることに疑いようもない彼らは、夢の中においては「ただそこにいただけの人」でしかない。

 主観的な世界において、人物の価値というのは、その役割に拠るのではなく、その人に対しての方にこそ依る。そういうものなのだろう。たぶん。



 で、夢の内容に関してだが。話の筋としては、本当に後輩くんとずっと無駄話をしていたのである。恋情ロマンスの欠片もありはしない。

 具体的には、なんか壮大っぽくもくだらない設定の中における、架空の戦記の話であったりとか、


「新規のシステム導入に掛かる予算が償却も込みで十億円とか掛かるの凄いよね、これが五千億円とかだったら、うち五百億円くらい貰えるといいのに。五百億円欲しい!」


 とか、そういう系統の取り留めもない話だ。間違っても客先の会議室で話すような内容ではない。


 自由に使える五百億円が欲しい、などというのは取り立てて説明も必要ないだろうと思うので、放っておくとして。本当にどうでもいい、くだらない妄想の話の結論を、Sさんではない方の女の人が、話の程度には不釣り合いな熱量で知りたがっていたのを記憶している。ということは、逆説的に途中退席などしていたのかもしれない。如何せん、話に夢中になっている時は、他者の動向など存外気にもならないものである。

 どうせなら、どういう話にどんな結論が出たのかくらいは触れておきたいものではあるが、その辺はもう忘れてしまった。てきとうにでっち上げてもいいのかもしれんが、とはいえ尺稼ぎが厳に必要という事もないので、「憶えてないもんは憶えてない」と開き直ることにする。マジで意味不明な前提での妄想話だった、というのだけは何となく憶えている。書けると一定程度面白かっただろう、ということも。



 尻切れ蜻蛉とんぼのような完成度の話で今日はここまでとなるが(と言っても以前のも大体そうだっただろ、と言われると返す言葉はない)、いつも通りそれらしい結論を結び付けて終わるとしよう。


 話に熱中している時というのは、その話以外のことが見えていない状態になる。それは例えば大勢の中で話している際に、他の人の温度感が気にならなくなってしまうことであったり、注視すべき他の大事な事に気付かないことであったりする。

 そもそも、大勢ではなく三人とかで話しているような場面でも、そこで二人だけに伝わるような話を延々と続けてしまうと、蚊帳の外にいるもう一人は面白くはないもので。対個人タイマンでの対話以外の場面では、そういった事に気を付ける必要があるだろうな、と改めて思う。



 まぁ、そもそもローカルな共通話題とかではない、純粋に練り上げられた妄想の話なんかは、仮に通じなくても聞いている側の問題だと言えるかもしれんが。

 コミュニケーションというのは原則として敵対行為ではないので、そこに「相手の咎」とか、反論がないなら俺の勝ちだが? とかいうような、別に役に立ちもしない勝敗に拘ろうとするのには、本質的な意味がない。


 そんなに勝ちたいなら脳内で勝利の妄想にでもふける、それがちょうど良い無様ってことさ。./どっとはらい


※少年アシベのゴマちゃんの飼い主:それが「少年アシベ」である。まともに見たことないとはいえ、主人公ぞ?

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