第30話

掃除して、昼飯は事務所で専務と食う。


「礼央くん、飯は三食食べないと。痩せてるしだめだよ」


「なんか、…俺ライブハウスの仕事向いてないかも」


「そう?じゃ、今度は違うとこ受ける?」


驚いた。専務は紹介したから、弟がいるから辞めるなって言うと思ってたから。


「…で、でも。先輩に相談してる」


「そう。好きなことしていいから」


「なんで、そこまで言えるんですか?」


「礼央くんが辛いのは嫌だよ。甘えじゃないってわかってる。だから、いいんだよ?困ったことあったらすぐ言っていいから」


俺のことあんま知らない風にしてて。

なんだよ。


「これは俺がちゃちゃっと作ったから。チャーハンとか超簡単だし、礼央くんの方がうまくできるはず」


「はぁ…俺そんなできるようになんで見えるんすか?」


「器用だから。だよ?」


そんな言われたことない。


「わかんね…」


専務は俺のこと観察してんのかよ。


飯食って、帰って寝て、ライブハウスへ。


「有木さんが、礼央は掃除担当でいいってさ。だから、俺の手伝いはしてくれよ?」


先輩は優しい。

そんなに俺を見てくれるのか?

俺を、わかってもらえる気がする。

華美さんも、そんな感じなのかな。


「ありがとうございます。俺、できること、やりたいっす」


「んじゃ、掃除よろしくな?」


頼られることが嬉しい。

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