第29話

「じゃあ俺、掃除…」


「もっと食べたら?」


「…そ、」


「うん」


「そんなこと、したら…昼飯、なくなる…」


「あ、華美さんのお昼ご飯だったんだね。うちからご飯持ってくるから気にしないでいいよ。礼央くんも昼ご飯まで食べなよ」


「…え」


「礼央くんはご飯食べるの忘れちゃうみたいなんです。だから、一緒に食べましょう」


「…そうだね。そうしよう。じゃあ朝ごはんは食べてなかったんだね?夜は?」


「食べてない」


「…よし、とりあえず仕事は食べてから!華美さんは料理上手だね」


「専務も上手ですよ」


「…料理すんの?」


「まぁ、そんなうまくはないけど?礼央くんはやったことない?」


会社でサンドイッチをひたすら食う。


「ないから…先輩が教えてくれるって…」


「え!?それって…二郎!?」


「違う」


「なんだ…そうなんだ」


「専務の知り合いですか?」


「弟なんだよ。ライブハウスのバイト先がね、礼央くんと一緒で。先輩だからもしかしたらなと思ってね」


「トラさんって呼んでるから」


「あー、そうか。そうだった」


「専務もトラさんって呼ばれてますよね?」


「ここではね?二郎のあだ名だから、あんまり呼ばれたくはないけどしょうがなく」


「そうなんですね。礼央くんは、ライブハウスでバイトしてるんだね。なんだか素敵」


「でしょ?そこに弟もいてね」


…俺はたいしたことはしてないけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る