事務所の清掃

第27話

なんて言えばいいんだ。

いらない!ってわけではない。

華美さんの昼飯なくなる。そもそも俺にあげるなんておかしい。やめたほうがいい。


「どうしたの?」


「え、っと…」


だめだ。脳が働かない。何を言うつもりだったっけ?


「お腹空いてる?」


「え…あ」


反応できなくて困ってしまう。どうしよう…


「礼央くん。口開けて!」


口?

華美さんは立ち上がった。


「サンドイッチだから。卵嫌いだったらごめんね」


!?

口になにか放り込まれた。


「うま…」


「よかった」


笑顔を向けられた。そんなの、初めてで。

ドキッとしている自分がいる。

いや、ふざけるな。俺には釣り合わない。


「…す、すみません…ありがとうございます」


「礼央くん、そこ座って」


「え…」


華美さんの隣の空いた椅子に座らされる。


「はいこれ。ゆっくり噛んでね」


少しちぎられたサンドイッチを受け取った。


「でも、あの、…昼飯は…?」


「大丈夫だよ?早く食べて!」


「あ、はい…うまい、です」


「ふふ。嬉しい」


これは、誰に対してもやること。専務にだって。気に入られてるなんて、思ったらだめだから。


「もっと食べられそう?」


「え、や…でも」


「あげたいの。こっちはハムだよ?」


「…俺、あんまり、飯…」


「うん」


「…飯食う習慣、なくて…」


飯の時間になったらおばちゃんに無理やり食わされてたけど、自分からは食うと言う意欲はあまりない。


「そうなの?じゃ、ご飯一緒に食べよう?」



華美さんも食べ始めた。なんで?

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