第26話

「仕事くれって…自分から言ったけど…すみません。…俺、できない…です」


無意識にお辞儀していた。先輩、幻滅しただろうな。


「…そうか。わかった。無理させてごめんな?」


そっと先輩に頭を撫でられた。いつも以上に優しい言葉で、辛くなった。


「お、俺……怖くてたまらないです」


「…そうか。明日有木さんに話そう。な?」


ぱっと顔を上げて先輩を見る。先輩は、いつも通りだ。動じてない。


「俺、クビ?」


「それはないから。ほら、帰るぞ。飯はちゃんと食ってるか?」


「…はぁ。店で食ってます」


憲緒さんのおごりで。いるとき。


「ん?飯作らないのか?礼央ならできそうだけど」


「作る?…あー、冷凍ならやったことある」


「いや普通に料理だよ」


「ない…」


「今度やってみようぜ?じゃ、明日な」


先輩と反対方向だから、もう帰る。

ちゃんと、言えた…よかった。

涙も流さず、言えた。


家帰ったのが深夜4時。遅くなってた。はー、8時から事務所の掃除だな。


飯も食わず寝ようとしたけど、目が冴えていた。だからなんとなく起きていて、そのまま仕事。疲れていたけど…仕事行かないと。


「礼央くん!おはよう」


バイトの華美さんは、よく話しかけてくれる。気さくで…ちょっと困る。もう自分の席にいるし。


「…おはよう、ございます」


「礼央くん、目にクマがあるよ?寝てない?」


「…昨日バイトが終わるの遅かったんで…」


言い訳になるけど。

専務はどこにいるんだ?華美さんだけ?


「眠たい?」


「いや…」


「朝ごはん食べた?」


「…いや」


「私の食べる?お昼のお弁当なんだけど」


「…そ、それは…」

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