第25話

「先輩、さっきの女たちキープしてた方がいいんすか?」


「いやいい。やめとけ。お前が狙われる」


「…やだ」


「だろ?余計なことすんなよ」


先輩に守られてるから受付は安全かもしれない。


「ねぇ、そこの若い子気になってたんだけど。かわいくない?」


げ、大学生っぽい女に話しかけられた。


「こいつは化粧濃い女は無理だとよ」


「えーまじ?」


「もう見ないなら帰れ」


先輩、俺は何も言えなかった。


「礼央、すぐ無理って言えばいいからな」


「はい…」


俺は接客というのが苦手だ。というか、あまり人が多いのがだめだ。見られるのがだめだ。

チケットの販売にしたっておどおどして、飲み物の注文する声にも怯えてしまう。どうして、そうなるのかわからない。


はぁ、だめだ…無理そうだ…。

この仕事、俺に釣り合ってない。


どっと疲れてしまった。でも倒れないよう普通を装って先輩にひたすらしゃべりかける。

俺はほとんどなにもできなかった。

せっかく仕事探してもらったのに。

申し訳なくて辛くなる。


「よし、片付けは適当にして明日やるか。帰るぞ」


そっか、もうみんないないんだ。耳から喧騒感がとれない。


「礼央?」


「…先輩、…俺やっぱり…」


「どうした?」


なんでも言っていいって?先輩、困らせるかもしれないのに。どうしたらいい?

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