第21話

「あのー、トラさんってベースうまいんすか?」


今日は、なんかグラス?を磨いている。飲み物とか出すのか?仕事しながら先輩と話してる。


「まぁ、あいつはなかなか練習熱心だからよ。まぁうまいんじゃないか?」


「へぇ、まじすか」


「誰に聞いた」


「トラさんの兄」


「まじか。お前兄貴と仲良いのな」


「いやまじ、俺ここに越してきたばっかだし、仲良いとかないっすよ」


「そうか?なぁ礼央、なんでも俺に話していいからな。お前、働き者だから有木さんがたまにはさぼってもいいって言ってたからよ。適当にしゃべれ」


「…俺は働き者?」


「だろ?お前の掃除した楽屋、まじで綺麗だからみんなびびってたぞ。礼央すげーな」


単純だから、褒められたら嬉しい。


「お、グラスも綺麗に磨けたじゃねーか。よし、休憩室行くぞ」


先輩について休憩室へ。畳でだらだらできるところだ。


「ここの部屋、散らかってるし、俺後で掃除してもいっすか?」


「いいぞ?茶ぐらい飲んでからやれ」


「あ、…ありがとうございます」


お茶入れてもらった。

あったかい。


「おい!お前なにさぼってんだよ!仕事しろや!」


突然部屋に怒鳴り声がした。


「トラうるせーぞ。礼央は休憩してんだ」


…思い切り殴られて、眠らせてもらえなくて。

働かないと、俺はだめなんだ。


「俺…仕事戻らないと…」


じゃないと、また酷い目に遭うんだ。


「待て。礼央、休め」


「いや、俺は働かないと…」


「おい!」


トラさんに肩を掴まれた。もう、逃げられない。


「お前…」


「す、すみません…仕事…」


「真っ青じゃねーか!寝ろ!」


え?


抱き抱えられた。

そして、畳に寝かされた。


「ほら、枕も布団もあんだぞ?てめぇ、働きすぎてんじゃん?寝てろ」


「トラ、さっきさぼってるって言ったの気にしたんだ。謝れ」


「…悪い」


「楽屋見たか?礼央一人で掃除してあれだ」


「ま、まじすか?業者来たんじゃねー?ってみんな騒いでたし…まじかよお前。適当にやれよ…無理してやる仕事じゃねーよ」


「ち、違…お、俺は…」



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