第13話

「はい、金井かねいです」


「あの、森山もりやまと申します。この間、うちで働いている米田が名刺もらったそうで」


なんか、おばちゃんの声だけども、怖い人からだ。すごみがある。彼はこんなとこによくいられるな。


「はい。オーナー様でいらっしゃいますか?」


「そうです。米田はあまり理解していなくて。でも違う仕事をやりたいようなので、おたくのお仕事のこと教えて下さいます?」


怖い、でも怯むんじゃない。


「…米田さんにお話ししたのは、弟の勤めている会社がライブハウスなんで、そこの受け付けと、うちの会社の清掃をと思いまして」


「へぇ、そうだったんですね。まぁ、建築の作業をさせられるかと思って」


「いえ、連絡先が書いてあるので、身分の証明になるかと」


「ご丁寧にありがとうございます」


「失礼ですが、米田さんのお母様でいらっしゃいますか?」


「いいえ。米田は親に見捨てられたのか、1人ふらふらしてるような子で。うちの息子が拾ってきたんです」


「…そうですか。うちの近くに空き部屋もあるし、住まいは確保できます。米田さんには、遊びだったり、いろんな経験をさせてあげたくて」


「あなたは、なぜそうさせたいと思うんですか?」


「妻も私も、米田さんと似たような…そういう環境で育ってきたもので。なんとなくほっとけなくて」


「わかりました。礼央とよく話をしますね」


「ありがとうございます」


ふう、なんとか電話終わりそう。


「金井さんは、いつもSM部屋ですよね?Mなんですか?」


「え…」


なんということだ。この質問をされるとは想定外!


「そうですね…どちらかといえばSなんですが…彼女もSなのか…いや、そうですね…」


なに言ってるんだか。


「またご利用下さい」


「…はい」


あしらわれてるし。

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