第15話 京都奈良全力ふたり旅―仁和寺


 京都には何度か訪れたことはあったものの、仁和寺には行ったことがなかった。立派な二王門を横目に毎回素通りしていたのだ。


 金閣寺と龍安寺は連れが行きたいと言ったのでコースに入れたのだが、そこから先をどうするかな? と悩んだ私は、初めて仁和寺を訪れてみようと思った。


 御室桜おむろざくらが有名で、かつては皇族の出家先としても格式申し分ないお寺、それが私の仁和寺の知識だった。


 広い、というのは漠然と知っていたが、見て回るのにどのくらいの時間を要するのか分からなかったので調べてみる。すると、この日の午後から弘法大師生誕1250年の特別法要が行われるというのを発見した。


 え、また。ラッキー!


 日によっては一般人は見ることができないようだが、この日は誰でも見ることができる。せっかくならば見たい、とルートに組み込んだ。


 法要に間に合うように龍安寺を出て、きぬかけの路を1kmちょっと。という看板を見て、暑さで少し疲労した私たちは迷わずバスに乗ることを選択した。時刻表を見ると、そこまで待たなくても乗れそうだ。


 少し遅れてきたバスに乗り、仁和寺の二王門前で降りる。が、あまりの門の迫力に圧倒されてしまい、しばらく口を開けたまま見上げてしまった。カメラで写真を撮ろうにも、二王門が大きすぎて入りきらない。


 それに阿吽の仁王さまもとても立派。迫力満点。なんで今まででスルーしていたんだろう。というか、どうしてこう行く先々にすごい仏像がうじゃうじゃあるの? 京の都すごすぎる。


 二王門から入ってすぐ。左手に曲がると拝観受付があり、御殿に上がって庭園を楽しむことができる。


 御殿の中の宸殿しんでんには、将棋の竜王戦で使われた封じ手が展示されており、藤井聡太七冠の直筆を間近で見ることができた。名前が真っ直ぐではなくちょっと斜めになるところ、なんか親近感が湧く。


 桜のシーズンが終わったからなのか、御殿はちょいちょい改修工事が行われていて見れない箇所があったけれど、確かに優美なお庭。龍安寺のわびさびの世界とはまた違った趣のお庭であった。境内の五重塔が見えるのがまた良いよね。


 御殿の入り口で御朱印をいただく。仁和寺では切り絵の御朱印が人気だそうで、季節限定の桜の切り絵御朱印をいただいた。


 レーザーで彫っているのだろうか、めちゃくちゃ細かくてすごく素敵。だが実はもうひとつ欲しい別の御朱印があるのだが、こちらではその御朱印はもらえないらしいので、御殿を出て、さらに境内へと進んでいく。


 ちょうど境内の中心辺りにある中門も改修工事中であったが、門を抜けると真正面に本堂でもある金堂が見えてくる。


 赤、白、紫、緑、黄色の五色の垂れ幕が屋根下から下げられており、風が吹くとさらりと揺れる。それだけでも格式の高さを感じさせるものであったが、近寄ると唐草のような模様が織り込まれていた。布でさえも美しい。


 金堂手前の納経所でもうひとつの御朱印をいただいた。こちらは弘法大師生誕1250周年記念の切り絵御朱印で、なんと帳面三面分ある。


 思わず御朱印のおばちゃんにどうやって貼り付けるのが得策か聞いたら、二面分貼り付けて内側に折り込むか、二面分貼り付けて、もう一面を裏側に貼り付けるしかないかも、と笑っていた。確かにそれしかないよね。


 それにしても額縁に入れたいくらいの細かい切り絵はもはやアート。どっちかというと墨で書いてもらう方が好きなのだが、これはこれであり!


 目当ての御朱印もいただいたことだし、すでに法要が始まっている時間であったから、次は弘法大師生誕法要の行われている御影堂へと向かった。


 思ったよりも小さなお堂で、弘法大師さまをお祀りしている堂なんだそう。普段は一般人は立ち入れないが、法要期間終わったあとは特別に一般人も一週間、堂の中に入れるのだそうだ。良いなぁ……入りたかった……。


 小さなお堂の中は僧侶でいっぱいで、私たちはお庭から法要を見守らせていただいたが、意外と見ている人は少なかった。境内でも大きく宣伝しているわけではなかったし、法要だから厳かに執り行いたいもんね。


 15分ほどその場で法要を見たあとは、少し降りたところにある観音堂を見学。外に紐に繋がれた角塔婆が立っている。


 これもしや御柱おんばしら


 ちょっと調べてみたところ、角塔婆の紐は堂内に安置されている千手観音像さまの手と繋がっているらしい。


 観音堂は普段は開帳していないため中は見られないのだが、この中には観音堂の御本尊である千手観音菩薩像や不動明王、風神雷神の像など三十三体の仏像が祀られているのだそうだ。350年ほど前の壁画も残っているらしいから、いつかは見てみたいなぁ……。


 角塔婆に繋がれた紐を握り締め、お参りをしたあとは五重塔へと移動する。


 こちらもまた立派な五重塔で、江戸時代に建てられた建造物。塔の前の階段上から中を見ようと頑張ったが、やはりなにも見えなかった。だが、こちらの中にも大日如来さまなどの仏像がいらっしゃるらしい。


 初めて訪れた仁和寺であったが、とても良かった。次は桜の時期にも訪れてみたいし、御室八十八ヶ所ウォークもやってみたい。


 約3kmの道程で八十八ヶ所巡りができるのだそうだ。3kmなら余裕ー。と思ったが、意外と危険ヶ所もありそう? ではその際はトレッキング装備で伺います!


 仁和寺を後にして、最寄りの嵐電御室仁和寺駅へ。レトロでめっちゃ味のある駅ー!


 こちらで少々待ち、次は嵐山の天龍寺を目指す。天龍寺……あのとき以来だ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る