第6話 京都全力ひとり旅2日目―首途八幡宮


 晴明神社から歩くこと約10分。普通の通りに普通にある神社、首途八幡宮かどではちまんぐう


 私はこちらの存在をまったく知らなかった。


 旅行に行く際は観光雑誌を参考にしながら、その周辺に何か無いか地図で調べることが多いが、今回は晴明神社を出発して、14時には嵐山の清涼寺にたどり着きたかった。


 行きたいところリストに晴明神社、広隆寺、清涼寺があるわけで、時間縛りがなければこのまま回れば良かったのだろうが、14時清涼寺、これは変えられないのである。


 昼ごはん? 今日も無いよ!


 さてどうするかなと思った私は、京都の地図を広げて晴明神社から清涼寺までの間の周辺を指でたどりながら、Googleにどういうところなのか教えていただく、ということを繰り返した。時折「京都 仏像 いっぱい」と検索もした。


 すると千本釈迦堂というところが目に留まった。仏像がいっぱいあって、晴明神社から歩いて行ける。よし、ここ行こう! というところで再び目に留まったもの、それがこの首途八幡宮であった。


 ただ歩いていただけではスルーしてしまいそうなくらい、普通に町に溶け込んでいる八幡さまで、鳥居と、すぐ後ろにぶら下がってる提灯が印象的。


 鳥居をくぐると、二の鳥居までまっすぐ伸びた短い参道の脇に、「源義経奥州首途之地」と刻まれた石碑が置かれていた。


 源義経が兄頼朝と行動を共にする以前、預けられていた鞍馬寺で出家するのを嫌って奥州藤原氏の元へと赴くわけだが、その際に寄って旅の安全を祈願したのがここらしい。


 大人しく出家して僧になっていたならば、今頃日本の歴史はどう変わっていたのか……などと考えるのもまた楽しい。


 一ノ谷の急襲、檀ノ浦の八艘飛び。後白河の判官贔屓。無くなったら結構変わるよなぁ……。戦況も変わるだろうしなぁ……。蹴鞠戦国時代とかになってたかもなぁ……。


 あ、鳩。手水舎の水口が鳩だ。珍しい。でも、正直鳩はね、嫌い。スルーします。


 二の鳥居をくぐると、二手に分かれた階段があり、右側を上ると弁財天さん、左側を上ると本殿にたどり着く。どちらも15段くらいしかないけどね。


 お社は普通の地元の神社という感じだが、ここはなんと!

 御朱印が!

 本当の意味で書き置かれているのです!

 チラシとかと一緒に!


 私もGoogleの口コミで知ったわけだが、社務所に人がいないので、御朱印が欲しい人は置いてある書き置きの御朱印に、備え付けの筆ペンで自分で日付を記入し、初穂料300円は本殿のお賽銭箱に入れるシステムになっている。


 初めてのパターン!


 普通にイベントなどの告知チラシと一緒に置かれている御朱印を一枚頂戴し、筆ペンで日付を入れる。


 書道はやっていたので文字は汚くないはずだが……曲がった。日付を間違わなくて良かった。


 財布から300円を取り出して賽銭箱に入れ、参拝。今回の旅の安全祈願と、再訪を願って。


 これが良かったのか、この後個人的にラッキーなことに恵まれる。行く先々で。


 首途八幡宮。


 派手さはないけれど、落ち着いた、とても良い八幡さまだった。


 ここから再び歩いて次は千本釈迦堂を目指す。


 まだ雨は落ちてこない。

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