第5話 京都全力ひとり旅2日目―晴明神社


 今回の旅。最大限悩まされたのが、行きたいところをいかに効率良くどうやって回るか、であった。

 

 どうしても行きたいところ。三十三間堂。東寺。晴明神社。広隆寺。そして清涼寺。


 今まで京都は家族、または連れと行っていた。連れと行く時は私主導だから良い。問題は家族と行く時。


 なぜこんなにも興味が沸かないところばかり連れて行かれるのか? と思っていたのだが、そもそも根本的に見たいものが違っていたのである。家族は庭園が好きらしかった。私は庭園にはそれほど興味なく、仏像や神社、歴史が好きであった。


 なるほどね。そりゃ、何であんなに歩かされたのにこんなに庭ばっかで微妙な気分になるんだろう、と思ったわけだ。(庭好きの皆様すみません)


 その点、今回は自分ひとり。好きなところに好きなように行けるのだ。久しぶりだし、行ったことの無いところではなく、好きなところに行くのだ。


 朝起きたら雨が上がっていた。しかし今にも降りそうな空。天気予報を見ると、まさに大阪ではゲリラ豪雨。1時間後にはこちらにも来るのだろうか。


 一瞬躊躇した。ホテルを出たら、退避できるところは限られてくる。しかもこの二日目、午前中にはほとんど乗り物に乗らない計画であった。


 天気予報と雨雲レーダーを何度か見比べ、腹を決めてホテルをチェックアウトした。


 ホテルの前のバス停から8時46分のバスに乗る。四条堀川のバス停から外国人観光客がわんさか乗ってきて、あっという間にバスは満員。


 この人たちはどこへ行くのだろう。このバスは一番手前だと二条城、その先に晴明神社、さらに金閣寺へ至る。二条城では誰も降りなかった。


 バスに乗って15分ちょっと。一条戻り橋のバス停で降りる。やはり誰も降りなかった。みんな金閣寺へ行くのか。


 バスを降りると目の前に晴明神社がある。


 ずっとずっと来たかった晴明神社。毎回組み込もうと思ってもなかなか組み込めず、ようやく来ることができた。


 五芒星の鳥居をくぐると、左手に昔の一条戻橋がある。掛け替えの際にこちらに移築されたのだそうだが、この世とあの世を繋ぐといわれる一条戻橋……。渡ったら……怖いからやめとこう(ビビり)。


 ちなみに現在の一条戻橋は、神社前の堀川通の横を流れる堀川にきちんと掛かっている。見た目普通の小さな橋だ。


 昔の戻橋を過ぎると、左右に太陽と月の柱があり、その先の小さな通りを渡ると晴明神社の境内に入る。

 

 右手の手水舎ちょうずやの奥には晴明井という井戸があり、通常時ならその年の恵方を向いて水が流れているそうなのだが、コロナもあってこの日は水は止められていた。ちなみに待ち受けにすると運気が上がるらしい。


 境内には人もまばら。待つことなく本殿の参拝を済ませ、本殿の左右に置かれた安倍晴明像と、厄除け桃の像をじっくり拝見。晴明さん、意外と普通のおじさんの印象。そりゃそうか。イケメンなのはゲームの中だけか。そりゃそうか。


 厄除け桃は、触れた者の厄を引き取ってくれるということなので、申し訳ないですがじーっくり触らせていただきました。よろしくお願いいたします、私の厄。


 本殿の横にはお稲荷さんの神殿もあり、これは晴明の母親が狐という説があるからなんだそう。古来からあやかしの力を使うのはやはり狐なのだろうか。


 そして御神木。こちらも触れられるようにステップが付いている。とても立派な楠で、私が両腕を広げて2人分くらいはあるだろうか。触るとほんのり湿ったゴツゴツの樹皮。心地よい。


 では御朱印。こちらの御朱印は書き置きのみで、折れないように晴明神社の桔梗柄のクリアファイルに入れてもらえる。めちゃくちゃ嬉しい!


 以前群馬の妙義神社で書き置きをいただいた時もクリアファイルが付いてきてめちゃくちゃ感激したのだが、あの時以来だ。妙義神社の御朱印のお姉さん、宝塚みたいな人だった……また行きたい。


 御朱印と一緒に水琴鈴のお守りも買う。涼やかな音色の水琴鈴は聴いてるだけで癒される。御朱印所にはたくさんの芸能人の絵馬があり、直近では中村隼人などの歌舞伎役者が参拝したようだ。四月の歌舞伎、陰陽師だったもんな、見たかったぁ……。


 さてここで9時15分。ここから歩いて首途八幡宮かどではちまんぐうに寄りつつ千本釈迦堂まで歩く。約20分の道のり。


 空は相変わらずの曇天。でもまだ降り出してはいない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る