高校時代は楽しかったな 秋元君
高校三年生の時、同級生に映画好きの秋元というクラスメートがいた。
彼は珈琲同好会という学校非公認の集まりを勝手に作ったり、放送委員会に所属して高価な放送機器を操作できる立場だったりした。映画について滅法博識で、いろいろな映画の話を聞かされたが内容は覚えてない。
周囲にはない独特の雰囲気を持っていて、何かのきっかけで話をするようになった。とはいってもそれほど親しくしていたわけではなく、なんとなく彼の人柄が気に入って細く長く交流が続いた。しかし卒業を境にして音信が途絶えた。
浪人を経て大学入試結果が出揃ったころに、彼から長い手紙が来た。
同級生を「貴様は」と呼び「必ずこの手紙の返事を書け」と命令口調の文章だったので苦笑い。内容は大したことではなく、同級生たちの動向を伝えるものだった。彼の独特の文体に「変わらないな」と少し嬉しく思った。
彼の愛読雑誌は週刊朝日だった。
昭和56年(西暦1981年)当時、そういう男子高校生は(おそらくだが)極めて少なかったのではないかと思う。新潮や文春ではなく朝日、朝日ばかり毎週読んでいた。勧められたわけでもないのだが、一度借りて読み始めて、その後在学中ずっと借りては読んで返すを繰り返していた。
卒業したあとは自分で買って読む。
政治や主義などに複雑な背景がありそうな週刊誌の中で、週刊朝日だけ読んだのは単に最初に読んだのが朝日だったからで他意はない。つまり秋元君のせいである。
結局週刊朝日を読む習慣は社会人になった後も長く続くことになったが、今年(西暦2023年)1月、休刊のニュースを聞いた。そして同年5月休刊。
この報に、秋元君は今どんな想いでいるのだろうか。
ふと彼のことを思い出したので記憶を書き留めておく。
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