第10話

 待ち合わせの校門に着くと足の脛まで長い白いワンピースを着た樋口理花が立っていた。


 すぐに端末とスマホを銀色のポーチに入れられた

。銀色のポーチはこれから僕が必要になるからと、そのまま僕にあげるという。まあ貰える物は貰っておこうの精神で「ありがとう」と言っておいた。


 ここから高松港辺りまで電車とバスで向かうらしいけど、海峡の電車が最近できたのもあって結構お金がかかるんだよね。移動中にチラッと残高を確認したけど心配するにはまだ早そうだなと安心した。



 僕の隣にいる樋口理花は電車内だからなのか、誰かに連絡を送っていて話はしてこない。これから二、三時間何も話さないのは少しコミュ障が過ぎると、何か話を振ろうと頭を回転させるが一向に思い浮かばない。


 話題を探そうとネットに接続しようとするがオフラインにしろと言われていたことを思い出して記憶から話題を探す……そういえば彼女は連絡をしているがオフラインにしなくても良いのか?

 「えっと……もうオフラインにしなくて良いの?」声量を抑えて恐る恐る聞いてみたが「いいえ、オフラインのままで御願いします」と返された。彼女はオンラインじゃないのか?一応僕と同じで銀色のポーチに端末とスマホを入れているようだけど……あまり追及しない方が良さそうだなと目線を広告モニターに移す。


 そこには出雲グループの一番大きい会社の社長の娘が行方不明になったことが広告モニター下の黒帯部分に文字として流れていた。「お金持ちの娘でも家出することってあるのかな?」と目線をモニターに固定したまま話して見たが「家出じゃないと思うけどね」そうこちらに顔を向けて話す。「確かにお金がある家から出たいとは思わないよね」と返したのだが少し迷ったような素振りを見せてから「誰かに追われてたりしてね」微笑みながら話す彼女は何か違うことを話そうとしていたかのような歯切れの悪い口調で言った。



 もうお昼頃になり昼食を摂りたいと言ってみたら良い店を知っていると言われて駅から数分のところにあるうどん屋に入った。もう高松に入っているが良い店を知っていると言うし頻繁にここには来るのだろうか?そういう感じに問うと「ええ月に一回は」「結構な頻度で来るんだね」一応通っている学校は京橋辺りなのだが、どこから通っているのか?……月に一回行くとなると一年で結構なお金がかかるような気がする。


 

 うどんは美味しかったが彼女の奢りになったことが少し心に残る。ただでさえ月に一回ここまで来るのだから一年でいったいお金がどれだけ商品されているか……申し訳ない感情が生まれるも、自分の中で次回は僕が奢ろうと勝手に決めておく。


 港町の外れにある寂れた倉庫が立ち並ぶ中の一つの倉庫で立ち止まり、正面の大きなドアを迂回して側面にある階段を上がり向こう側の見えないガラスが貼られたドアをノックする。僕はそれを眺めながら倉庫の後ろにある山の緑が無くなっていることに物悲しさを感じた。


 ギイと軋む音と共にドアが開かれ「入って」と促され「お邪魔します」と恐る恐る中に入る。


 寂れた倉庫とは思えない程、中は綺麗な木目の床の廊下があった。廊下を真っ直ぐに進み。一番奥の扉で立ち止まった。


「さあ、入って」「お邪魔します」入室して辺りを見回すと、学生服を着た小柄で同じような顔をした可愛い人が二人が窓側のソファーに座っており、ジャージのような服を着ているが体格がよくタンクトップを着ているように錯覚させる男性が右の棚で丸椅子に座っている。左には机で僕くらいの身長の細身で寝不足そうな目をした男とその隣に黒いズボンと白のシャツを着こなした年上に見える女性が鉄パイプの椅子に座っていた。


「えっと……石川春です。よろしくお願いします……」「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。皆仲間なのですから」と言われてもこの部屋では樋口理花しか顔見知りがいないのだから緊張してしまう。


「紹介したいって奴か?俺は大元介よろしく」大男が手を出して握手を求めながら自己紹介されたので一応握手をしておく。「それじゃ我らレジスタンスのメンバーを紹介しよう!」そう言って大元介は仲間の紹介を始めた。

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無能力者の理不尽 km黒 @kmkuro

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