第5話

 朝だ。


 多分だけど、これで撃たれたのは二回目だ。


 日付が入学式まで戻っている。


 これで悪夢では片付けられなくなってしまった。恐らくだけど書記はあの後殺されて、屋上から落とされ、自殺扱いにされたのだろう。


 悪夢でないならクラスメイトの半分は特異な力を持っていることになる。これなら書記を救えるかもしれない。面識は無いし、人柄もよく知らないけど、チンピラ程度なら余裕で撃退して、あの目の男がくる前に逃げればいい。


 そうと決まれば行動だ。すぐに朝食を食べて入学式に出席した。


 まずは前回と同じように体調不良を装ってきっかけを作る。そして一番の鬼門はどうやって特異な力の話を聞き出すかだ。


 心を読む人がいたら話は楽なんだが……そんな都合の良い人は居ないか。


 取り敢えず、何となく探りをいれてみようかな。


 前回よりもスムーズに友達を作ることができたが、ここからが正念場だ。まずは、前回調べていて怪しかった体育の授業の話をしてみることにした。



 入学式から一ヶ月がたって体育の話をしても大丈夫な頃合いだろう。日常を装い、それとなく樋口理花に話し掛ける。


「授業が始まって思ったんだけど、体育の授業って何で二つのグループで別けてしてるのかなー?」

 それとなく話したが怪しまれなかったか?少し眉に皺ができていた気がするが、すぐに笑顔で

「運動能力で別けてるって言ってたし運動能力じゃない?」こう返ってくるのは想定していた通りだ。


「でも運動ができる人とできない人がグループを別けているとは思えないんだよねー。別の基準があると思うんだよ」終始ニコニコしながら事前に用意したセリフを吐く。


 彼女は不思議そうな顔で「例えば?」と聞いてきた。少し言うのを躊躇いながら「特別な人……」我ながら酷い濁し方をした。


 彼女は一瞬、目を見開いたと思えば、また笑顔に戻り「何それ」と笑いながら言ってきた。


 自分の探りの入れ方も酷いが、彼女の嘘の隠し方も大概だなと、心の中で思った。


 この流れを他の友達にもしてみたが、全て冗談で片付けられる。一部、とんでもなく焦りをみせるヤツがいたが、他の人が割り込んで話が進まない。


 こうなったら自分で、書記を救うしかない。


 そう決心して夏休みに挑むことにした。まずは準備を進めて、計画を立てないといけないが、一回目はシンプルに、先回りして止めに入ろうと思う。


 一応、生徒会が怪しいみたいな話もしてみたけど、これも冗談みたいな空気で流されてしまった。


 この行動が今後どんな作用をするのか、前回と違う展開がくることを願っておく。

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