第4話

 書記の家が遠いのか会長と別れてから三十分は歩き続けている。


 ここら辺は駐車場や小さなビルが立ち並ぶ場所でどう考えても家やマンションに向かっているようには見えない。どこに向かっているんだ?


 思考を巡らせていると夕方に見かけた外国人マフィア風の風貌をした集団が、書記の前にある曲がり角からぞろぞろと出てきた。目を合わせないようにしようと決意を固め前を向く。


 書記は走っていた。とんでもない速度で走っていた。何故?


 そんなことを考えてもわからない。分かるのは書記が走って、不良風貌の人達がそれを追いかけていることだけだ。


 追いかけなきゃ何も聞くことができず死んでしまっては……


 それだけはダメだ。


 追いかけた。追いかけ続けた。やがて彼は五階建ての駐車場に逃げ入って彼らも入っていた。


 どうするのが正解なんだ?


 辺りを見回しながら考える……おかしな時間帯的にはもう少し人通りがあるはずなのに、ここら一帯に人の影が一つも無い。


 まさか誘い込まれている?


 どっちが?


 いったい誰がここに誘い込んだんだ?書記か?それとも不良達?


 うん?駐車場の最上階に誰かいる?


 確かにいるて……冷水を突然かけられたような衝撃を受けた。


 あの目の男がいた。


 見間違いじゃない、なんならさっきの不良と会話しているところを見た。


 そこで何となく察した。彼は、書記は死ぬ。


 あの男に殺されるのだ。


 確信とした時には身体が動いていた。


 助けないと彼は死ぬ。あの夢……いや未来でそうだったのだから。


 駆け足で階段を上り、怒鳴り声のする階を目指す。


 そこには、横たわった不良達とそれを見下ろす書記、狼狽した様子ながらも戦おうとする他の不良達がいた。


 これは大丈夫なのでは?


 正直なんで複数人相手に勝てているのかわからないが、この様子だと殺されることはないだろうけど、一応様子を観ておこう。


 そう結論を出して階段の直ぐ側にあった黒のワゴン車に隠れて、書記達の方を確認する。


 書記のガタイがいいから強いのは分かるが、それにして強すぎない?


 書記の一発一発の拳が彼らを後方の車まで吹き飛ばし、不良達の放った攻撃にびくともせず、反撃をし続ける。


 あれ?あの人、ナイフ?ていうか日本刀じゃ?

まさか本気で殺しにかかっているのか?


 不良達が長い刃物を突き立てて書記へと突進してくる。一瞬当たったかのように見えたが寸前のところで躱し、何事もなく一人一人薙ぎ倒していく。


 集中して気づかなかったが、後ろから人の気配があって動きたくても動けなくなってしまった。


 後ろを振り向きたいが振り向けない。


 一か八か書記のところまで走り出して助けを求めようか。あの強さなら何とかなるだろう。


 書記へ向かって走り出した時には、全てが終わっていた。


 走りながら後ろを向くと、あの目の男がいて。手には拳銃が、銃口がこちらに向けられていた。

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