パーティーメンバーを寝取られたおっさん冒険者は自分に惚れている年下美少女と新たにやり直す〜NTR男が今更かつての仲間を返したいと泣きついてきてももう遅い〜
第33話 明日のダンジョン探索に備えて今日は早めに寝ましょう
第33話 明日のダンジョン探索に備えて今日は早めに寝ましょう
仕切り直して、防具を選び始めることにした。
装備を揃える前に攻撃と防御のどちらかに比重を置くかはパーティー毎にまちまちだ。
攻撃は最大の防御という格言をモットーに今回俺は攻撃に比重を置いたのだが、これは優れた武器で敵を素早く倒す方が理にかなっていると判断してのことだ。
かといって防御面をおざなりにするわけにもいかない。なんでもないダメージが致命傷になることは珍しいことじゃない。
特に大盾を持って攻撃の矢面にさらされる騎士の職であるエヴァンジールは、その盾役という特性上もっとも防具を重視しなければならないだろう。
逆に身軽さがウリであるスティングベルや魔法による後方支援担当のアーリアとパストはいざという時の機動力を削いではいけないので、そこまで重くない装身具などが好ましい。
一番難しいのがセイだ。
大剣を使う以上、バックラーなどの小型盾は装備できないので畢竟モンスターの攻撃は回避、または剣の腹で防ぐことになる。
当然背後はがら空きなので最低限の防護と動きを阻害しないようにレザーアーマーを装備させるのが無難かな。
各メンバーの方向性は決まったので、あとは商品の中からそれに見合った防具を探す。
所持金の限度額以内で買える防具の中になかなかいいのがあったので、クーポン券を使ってそれらを購入して装備品の調達は完了した。
それから少しだけ余った金で数本の回復薬と携帯食料を買い揃えて、本日の買い物は終了。
◆
日が沈みきる前に宿に戻った俺たちは買ってきた物を各自で部屋に運んだ。
それが終わると昼と同じように談話室に集合して簡単なミーティングをしてから解散した。
幼女たちが部屋に消えるのを見届けてから明日に備えて早めに就寝するべく俺も自室に戻る。
しかしそのまま床に着く前に旅支度の最終確認をすることにした。
万が一不備でもあろうものなら、執事として目も当てられない。そうでなくても俺は几帳面なのだ。
薬は……よし、食料もばっちりだ。地図作成道具も簡易医療具もきちんとある。すべて完璧、なんの不足もない。
おっと、もちろん卒業式で賜ったあの宝物の方位磁針も忘れてはならない。
明日には冒険者としての俺とこいつの記念すべきデビュー戦だ、しっかり活躍してもらわないと。
「……眠れないな」
確認作業も滞りもなく終了したので、ようやっとベッドの上で横になるものの、すっかり目が冴えてしまっていた。
別にベッドの造りが粗悪で寝心地が悪いからとかではなく、単純に脳が興奮しているからだ。
なにせ俺たちはこれから約数十時間ほどで初めてダンジョンに挑むのだ、これが興奮せずにいられるか。
一方で不安に思う気持ちは正直……ない。
そりゃまったくないといったら嘘になるが、現状では不安を覚える余地はない。
なぜなら俺は自分の能力がダンジョンに十分通用すると信じている。
戦闘面はどうしても幼女らに頼らざるを得ないが、それ以外の面でならあの子たちにも貢献できるはずだ。
「あの子たちに、か」
独りごちながら脳裏に思い浮かべる。
俺が担当することになったパーティーのメンバーである幼女たちの姿を。
メンバー五人全員がいとけない幼女であると判明した時は落胆したものの、それは俺の勝手な理想を彼女たちに押しつけていたからだ。
同じく王国探検隊候補に選ばれた手前、てっきりヴィオレットさんのような完璧な冒険者がいるものだと思い込んでいたが、それはあの子たちにとって大変無礼なことだった。
理想からかけ外れたこともあり、どこか投げやりな態度で接してしまったのも事実だ。
いずれ期を見計らって、このことについてちゃんと謝らないとな。
「……と、もうこんな時間か。そろそろ本当に眠らないと朝が辛いな」
あいつらには早めに寝ておけよと言ってたくせに自分が破ってどうするんだ。このままだと日の出を拝んでしまいそうなので、無理やり目を閉じる。
そうだ、こういう時は羊を数えよう。
羊が一匹、羊が二匹、執事が三匹とかいう古典的ギャグを脳内に思い浮かべている内にいつのまにか俺の意識は暗闇に沈んでいた。
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