パーティーメンバーを寝取られたおっさん冒険者は自分に惚れている年下美少女と新たにやり直す〜NTR男が今更かつての仲間を返したいと泣きついてきてももう遅い〜
第15話 元エリートは隙あらば自分語りをします
第15話 元エリートは隙あらば自分語りをします
ダンジョン探索二日目。
まずは昨夜から待ち続けた森の入り口まで偵察に行ってみると、濃い朝霧に包まれて視界が良好ではなかった。
ダンジョンには往々にしてこういうことがよくあるが、自然の
だからこのまま霧が晴れるまでいくらか待とうとミュリエルに提案したが、彼女はそれならもう少しだけ周囲を見て回りたいと口にした。
その提案に一抹の不安を覚えなくもなかったがやる気になっている彼女に水を差すのも悪いかと思い、いざという際には撤退を最優先することを約束させてから俺たちは再び野営場所に戻った。
早朝に彼女と顔を合わせた時はつい数時間前の出来事のせいもあってかお互い赤面してしまい、なんともぎこちなかった。
いくら知識豊富なおっさんといえどこういったことに対する人生経験は少なかったから、平たく言えば免疫がなかったというわけだ。
しかしダンジョンという共通の話題のおかげで次第にそれも収まり、やがて彼女といつも通りのやりとりができるまでに回復していた。
「どうですレイドさん、地図は書けましたか?」
一人分距離を空けてこちらを先導する形だったミュリエルは、そこでくるりと振り返った。
ここが見通しのいい道だからよかったものの、もしそうでなければこの瞬間に敵が接近してきても発見が遅れてしまうと軽く注意していたところだ。
ただ彼女の朗らかな表情を見ていると時折説教の言葉も飲み込んでしまうこともあるのだが。
「まあ、この辺りの経路や地形は書き終えたよ。穴埋め度は七十パーセントってところかな。全体の完成図まであとちょっとだ」
「はええ相変わらず手際がいいですね。
魔物の襲撃に備え周囲に注意を払う必要のある女性に変わって、マッピング作業を行うのは執事の主な仕事の一つだ。
ひょいと俺の手元を覗き込んでくるミュリエルにも見えるようにそれを広げると、彼女は地図の出来栄えに感心した風で息を呑んだ。
「一目で情報が探しやすい! それに見やすくて分かりやすい! 疑問なんですが、なんでこんなに丁寧に地図が書けるんですか?」
「こういう細々とした作業は得意だし執事として生きていく上でこれぐらいはできなきゃな。それに今まで培ってきた経験と年期が違うから」
ダンジョンにおいて、地図作成のスキルはある意味もっとも重要視される能力だろう。
せっかく金銀財宝を手に入れたとしてもそれを生きて持ち帰ることができなければ本当の意味で宝の持ち腐れだ。
だからこそ冒険者は、時に大枚をはたいてまで
一マス単位で精緻に書き上げられた地図はある
手早く、それでいて正確に作りあげられた地図は正に冒険者にとっての生命線だ。
ゆえに俺は数々の執事スキルの中でも特にこの部分を重点的に鍛え上げてきた。
最悪このスキルさえあれば食いっぱぐれることはまずないだろうという小ずるい考えも作用してのことだが。
「前々から思ってたんですけどレイドさんの能力があれば、もっと上のパーティーに所属することだってできたんじゃないですか?」
「……かもしれないな。こう見えて俺も昔は王都で将来を
目を閉じると、まるで昨日のことのように思い出される。あの時の俺は正しく人生で一番輝いていたと実感できる。
現在ではこってりとした皮脂油が顔に乗って別の意味で輝いているが。テカり顔ともいう。
「王都……ああ、アークリル王国のことですね。数十年くらい前にその国で一番有名なパーティーの女性冒険者が国を相手に反逆を起こしたと歴史の授業で習ったことがあります。えーと確かそのパーティーの名前は——」
「『
「すごいじゃないですかっ! SSS級ランクって認定上限が決まっていて、たとえ実績があっても限られた人しかなれないんですよね。いいなぁ、私だってまだC級がやっとなのに。……ってあれ、それじゃなんでレイドさんはあんな田舎の街に」
触れてはいけないことだと思ったのか、途中で彼女の言葉が尻すぼみになる。別に気を遣う必要もないのに。
だからなんでもないことのように言う。
「当時スカウトの条件としてあるパーティー直属の執事になってほしいと頼まれたんだが、俺の方から断ったんだよ」
「えー、どうして断ったんですか? せっかくのチャンスだったのに」
まあ普通に考えればその後の躍進のきっかけになるチャンスを自分から棒に振るのはありえないかもしれないな。
だけどその内情を知れば十人中九人は俺と同様の選択を取るだろう。
なにせ――。
「その女性から紹介されたのは、全員幼女だけで構成された幼女だらけの、まさに幼女パーティーだったんだ」
「よ、ようじょ? 三回も言う必要が?」
俺の発した言葉にきょとんとするミュリエル。
今一ピンときていない様子だが無理もない。
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