第09話 番外編〜今昔NTR男物語②〜
俺の名前は……ってなに、興味ない?
おいおい、こういう時ってまず自己紹介するんじゃないの? まあ別にいいけどさ。
とにかく俺にはある壮大な夢がある。
それは毎日ただ女と遊んで酒を飲むだけで大金を得ることができるという夢のような仕事に就くことだ。
なんでもそいつはずっと東のオウド皇国にのみ存在する男専用の職業らしく、『
遊び人。うん、いい響きだ。
ただしこの職業に就くにはいくつか条件があるんだと。
まず第一に酒に強いこと。
次に女の扱いが巧みなこと。
そして最後にこれが一番重要なんだが、外見がイケメンであることだという。
とりあえず酒に強いという条件はクリア。
女の扱いも問題ない。
なにより俺は自他共に認めるイケメンだ。
ガキの時から女に不自由したことはない。
その頃は巷では女殺しのショタと呼ばれる存在だったこともあり、たいそう可愛がられた(性的な意味でもな)。
生まれ育ったくそド田舎の女全員と関係を持ち(ただしババアとブスは除外)、はからずも親父を含んだ男ともども穴兄弟にもなった。
これもすべて顔の整った美形だったからできたことだ。
つまり俺にとってその遊び人とやらの職業は、正に天職というわけだ。
まあそんなわけでさくっとオウド皇国まで移住してとっとと遊び人になりたいんだが、こっちとあっちとじゃ貨幣が違うしなにより
その額なんと十万。こっちの国の通貨じゃ宿で一月は豪遊できる金額だ。たかが入国するだけでそいつはボッタクリ過ぎだろ。
さらに遊び人のみが在席できる遊び人互助組合――ホストクラブに加入するには、頭金百万ほど必要だというから驚きだよなぁ。
でもその代わり一度そこでナンバーワンホストになると一夜でそれの十倍以上の金を稼ぐことも可能だという。
遊び人、マジパネェ。
とにかく先立つものがないとその夢の地に足を踏み入れることさえできないので、俺はてっとり早くある程度まとまった金を工面できる冒険者になることにした。
数ある冒険者専用職業の中で男が唯一就くことのできる執事職についたわけだが、言ってみりゃこれは女のヒモになるみたいなもんだ。
女冒険者の身の回りの世話をしながら魔物との命をかけたやりとりはそいつらに任せる。
もちろんダンジョンで手に入れた報酬は山分けだ。
おっと、忘れてた。
冒険者になると冒険者協会とかいう場所で洗礼の儀を受けさせられるんだ。
そこで適正のある人間だけ神様から個人専用のユニークスキルとかいうのもらうわけ。
ちなみに俺がもらったのは『
コイツはある程度条件が必要だが俺に強制的に惚れさせるという効力なんだから、すごいよな。
もしこの力を手にしたのがブサメンならば宝の持ち腐れだったユニークスキルも、イケメンの俺が手にしたことで正しくその効力を振るまった。
おおっぴらになっていないが、執事の世界には枕営業というものがある。
簡単に説明すると、女冒険者と性的な意味合いで寝ること(女冒険者は性欲が強い場合が多い)で見返りに仕事の機会をとってくるって寸法だ。
んで賢しい俺は、例のユニークスキルを枕営業に使えると踏んだわけよ。
より具体的に言えば、目をつけたパーティーの女どもに
まずは適当な理由で声をかけてユニークスキルを使用する。
相手にスキルの力が効いたのを確認してから宿に誘い、ヤルことヤッたあとでこう耳元でお願いをする。
「あんな冴えなくてダサいおっさん執事より俺をあんたたちのパーティーにイれてよ」
そうすりゃ、惚れたよしみで向こうは俺の命令に従ってくれるって寸法だ。
この作戦により労せずして強いパーティーを手に入れ、わざわざ努力しなくても金稼ぎはわりと楽にこなすことができた。
本当は貢がせられりゃもっと楽だったんだが、いくら俺に惚れてるとはいえ冒険者も大概サイフの紐は固いからな、さすがに無理だった。
なにより困ったことにこのユニークスキルには時間制限があった。
強制的に惚れさせるといってもあくまで一時的なもので、効力が切れてからは俺に対する好感度というのが元に戻っちまう。
戻るってのはあれだな、元々俺に抱いた感情が蘇るってことだな。
要は「やだこの人イケメン! ……だけど自分のタイプじゃない」とか。
そうなってから訪れるのが執事としての継続的な雇用問題だ。
自慢じゃないが俺は執事の仕事が大の苦手だ。というよりしたくない。
だからユニークスキルの効力が切れてからは、純粋な執事としての能力不足が浮き彫りになる。
いくらイケメンだろうが、この業界は使えない人材はいずれ切り捨て対象だ。
てなわけで早くて一週間、長くて一ヶ月程度でこれまで奪ってきたパーティーから追放された。
その都度新しいパーティーを探しては前任者の執事から強引に女冒険者を寝取り、やがて自分も追い出される。
そんな極めて短い期間の内に様々なパーティーを壊して回った俺を、いつしか同業者は影でこう噂した。
——ダンサーの王子、と。
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