第191話 逃亡防止の腕輪
ぐにゃ。
何か一瞬足に感覚がなくなり、床を踏み損なって転倒した。床に手を着いて、起き上がって逃げようとしたら手からも力が抜けて、顔ごと床につっぷした。
「無駄だ。その腕輪を身に付けていたら逃亡はできない。」
頭上から凍るような声が聞こえた。
なんだこれ?逃亡ができない?この腕輪って?
俺、これからどうなるんだ?
もがけばもがく程手足に力が入らなくなりパニック状態になった。
「誰か!助けてくれ!誰か!」
叫んだけど誰も助けてはくれなかった。
「うるさいぞ。それ以上騒ぐと、言葉もしゃべれなくするぞ。他の連中と同じようにな!」
しゃべれなくする?
どういうことなのかよくわからなかったけど、その言葉に言い様のない恐怖を感じて、叫び出したい気持ちを抑えた。
誰かに担ぎ上げられて、運ばれて行った。
連れて来られた先は石で出来た牢屋みたいな場所だった。鉄格子の窓がついていて、夜空が見える。
そして、月明かりで室内に同級生が何人も蹲っているのが見えた。
「おい!中田!大丈夫か?」
近くに蹲っていた中田に声をかけたが反応がない。肩を掴んで揺り起こすと、顔を少し持ち上げたがトロンとした目をしていた。
「中田、起きてくれ!何がどうなっているかわかるか?中田?」
両手で肩を掴んでゆすっても反応がない。焦点が合わないぼーっとした顔つきをしているままだ。
すぐ隣に蹲っているやつも揺り起こす。
「坂上!起きてくれよ!」
坂上も顔をあげたけど焦点が合わないぼーっとした顔つきのまま、応答がない。
「なんだ?皆しっかりしてくれよ!」
諦めずに次に持田を揺り起こした。
「持田!頼む!反応してくれよ!」
同じようにぼーっとした状態の持田の背中を強めに叩いた。
「うっ‥!!!!!!!!」
一瞬声を出した持田が突然苦しそうにもがいて床を転げまくった。
「持田?」
慌てて助け起こして背中をさすったりして介抱をしたけど、苦しそうな顔から落ち着いて来たら再び、焦点の合わない目に戻ってしまった。
「なんだこれ、なんだこれ、なんなんだよ〜!!!」
俺の叫びは夜の闇に吸い込まれるように、誰も反応しなかった。
夜が明けたら、騎士のような人が数人きて、鎧のようなものを手渡され着替えろと言われた。俺以外のクラスメートも同じように着替えろといわれていたが
俺だけ何だか鎧の色が違っていた。
俺が話しかけた時に全く反応しなかったクラスメート達が、モゾモゾ動いて着替えを始めた。でも目はボーっとしたままだ。
「お前も早く着替えろ。」
騎士が俺に向けて怒鳴って来た。しかたなく上着を脱いだけど、騎士達に監視されながら肌を晒すのが嫌でワイシャツを着たまま鎧を着込んだけど特に何も言われなかった。
こっそりシャツの胸ポケットにスマホをいれたままにしていた。ボトムズも脱げとも言われなかったので上から着込んだ。
着替えたら、牢屋から出されて、どこかに連れて行かれた。手足に力が入らなくなるのが怖くて、抵抗できない。
促されるままに歩いていくと、別の建物まで連れて行かれ、室内に入ったと思ったらそこには本木の姿があった。俺と同じ色の鎧を着ている。
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