第34話 召還というサイアクな儀式

モゾモゾと必死に身体を動かそうとしたら、ボン!と布の上からはたかれた。


「騒ぐなと言っている!馬車から放り出すぞ!」


寧ろ放り出してくれていいんじゃないか?どうする?どうする?

半ばパニックになって、布から抜け出ようとしていたら、頭の辺りをポンポンと軽く叩かれた。


「落ち着け。殺したりはしない。」

「え‥‥。」


まるで俺の心を読んだかのように言われた。


「森に行った後、森の中に御前達の友人を埋葬する。その後お前達には森を抜ける方法を教える。」

「‥‥こ‥‥殺さない?」

「アラナ様曰く、無駄な労力だ。」

「‥‥。」


酷い言い様だ。


「だが、お前達はおそらく運がいい。」

「え?」

「あの神殿に残されていてたら一生労働力として使われるだけだろう。最低限の衣食住は与えられるが‥‥。」

「‥‥。」


担架を運んでいた日本人っぽい顔の兵士らしき人達を思い出した。やっぱりあれは、以前行方不明になった人達なんじゃないのか?


森に着く迄の間にライアンさんが、今居る場所の事を説明してくれた。

今俺達が居る場所は、オスタリコラル王国の中の神殿領域と呼ばれている所だという。

王都からは大分離れた辺境に近い場所で古代の神殿があり、そこで召還の儀式が行われているらしい。

過去にも召還の儀式が行われたと言ってた。やっぱり、と思う。

目的は、国を脅かす凶悪な隣国の軍団に立ち向かう為とのことで、召還したいのは「戦闘力の優れた勇者」なのだという。

場所や対象を特定する事が難しいらしく、何人召還されるか予想がつかないとのこと。そして召還された中に能力が優れているものと、そうでない者が混じっているという。

あの金髪の女性はアラナ様という、この国の第二王女様で巫女でもあるらしい。

最近の召還の儀式は全てアラナ様が中心になってやっているのだそうだ。


なんなんだよ。数うち当たれみたいに呼び出さないで欲しいよ。‥‥そのために‥‥こんな奴らの為に圭は死んだのか‥‥。

目の奥がカッと熱くなる。あの、血みどろの光景が目に焼き付いて消えない。

もぞっ。何か俺の背中に触れた。あ、藍ちゃんか?

おそらく俺達はみの虫みたいにグルグル巻きにされた状態で荷馬車に並べられているんだろうと思う。

藍ちゃんの存在を思い出して少し冷静になった。


圭の事を思い出すと、怒りと悲しみでどうしていいか判らなくなる。でも藍ちゃんがいる。藍ちゃんは守らなきゃ。

冷静に考えよう。可能な限り。


あの、アラナという人は、俺達を捨て駒のように考えているだけだ。ただ、その場で殺せと命じていないだけマシなのか?

このライアンという人は味方になってくれるかは不明だけど、一応話は通じる様に思う。

森を抜ける方法を教えてくれると言っていた。

出来るだけ、この人から情報を聞き出そう。

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