美少女が赤面してるんだが

「やってしまった」


そうつぶやく。アリシアさんの望みはわかってる。でも、それができない自分がいる。俺はいつだって勇気を出せない。


今すぐ追いかけたい。謝りたい。でも、それをしても…


「アリシア」


そうつぶやく。一人なら、呼べるのに。スカイマンなら直に追いかけていったのに。今の俺はスカイマンじゃない。必死になれない。


「………」


ケーキを食べる咀嚼音だけがオレの体を支配する。甘いのに美味しくない。官職して紅茶を飲み干すとその場で伏せてしまう。


「お客様」


「……紅茶とショートケーキのおかわりください」


「ご注文はできません」


予想外の一言に顔を上げた。


「お連れがお客様の分も会計を済まされましたので、もう一度ご注文するには一度ご退店して頂く必要があります」


「わかりました」


仕方無しに出ていこうとする。


「お客様。お忘れ物です」


そう言われ、ふとみると雑誌が置きっぱなしだった。これはアリシアさんの買ったもの。持ち主もアリシアさんだ。


「どちらの物かわかりませんが、もし仮にお連れの物でしたら届けに行ってくれるとこちらとしても助かります」


冷たい声色の店員さんの方へ向くと僅かに微笑んでいた。


「他のお客様のご迷惑になりますのでご退店ください」


そう言ってウインクをしてくる。そうか、そうだよね。うだうだしたってなにも始まらない。いや、むしろ悪化するだけだ。


スカイマン。おねがい。この悪い状況を打破してくれ。


「わかりした。ご馳走様です。また来ます」


俺は雑誌を持って急いで店を出る。アリシアさんを追いかけた。見当たらない。駅近くで人が多い。


今は11時前、どこで食事をしようか、何をしようか、そんな移動する人たちで溢れかえっていた。


アリシアさんは金髪だ。わかりやすい。だけどフードと帽子で隠されてると意外とわからないものだ。どうしよう。


帽子!


俺は急いで歩道橋へ走る。歩いていくる人々の間をすり抜けて、階段を上がり上からアリシアさんの被っていた帽子を探す。


見つけた!


結構距離が離れていてあれがアリシアさんと確信が持てない。けれど行くしか無い! 


歩道橋から降りると姿はまた見えなくなる。それでも真っ直ぐに進む。見えた地点までつくと辺りを見渡す。


「おいゴラァ! どこに目をつけてるんだ!」


誰かの怒号がきこえる。気になって振り向くと、アリシアさんがいた。不良に絡まれている。


『ご、ごめんなさい』


「そ〜り〜? オメェ外国人だな?」


「ごめんなさい。ぶつかるつもりはなかったの。急いでるから」


「おっと、それはないんじゃねえか?」


立ち去ろうとするアリシアさんの行く手を阻みもう一人の不良は腕を掴む。


「いた!」


「結構可愛いじゃねえか。こっちこい!」


周りに野次馬ができているが誰一人として助けに入ろうとしない。そんな野次馬の中を半ば無理矢理かきわける。


「離せ!」


そう言って雑誌を不良の顔面にぶん投げた。


「ぶっ!」


不良は不意打ちによろめいてその膝に足をかける。膝を足場に肩に乗り力強く跳んで踏み倒す。その高さから体を捻ってもう一人の不良に飛び蹴りを入れる。二人共倒れると直にアリシアさんの手を取る。


「今のうちに」


その場から逃げる。打たれ強かったのか不良は直に立ち上がって怒りをあらわにしながら追いかけてきた。


「てめぇ! 待ちやがれ!」


「ぶっ殺してやる!!!!」


町中は人が多い。懐うように走れない。向うもおなじ。どこかで差をつけないと行けない。


「アリシアさん。掴まってて!」


「え? キャッ!?」


階段が見えた俺はアリシアさんを持ち上げお姫様抱っこをする。そのまま跳んで階段の手すりに乗り重力に従って滑り下りる。


その勢いのまま着地してアリシアさんをおろしまた走り出す。不良どもは逆に階段を走って転び、一気に差が開く。


「トイレに隠れよう!」


角を曲がって公園が見えたとき、アリシアさんがそう叫びながら別の方向へ走り出す。そういう事か!


「わかった!トイレに隠れるんだな!」


俺も大声でいう。既に不良達の視界から外れているためそのまま走り抜ける。思った通り不良達はトイレの方へ向かった。


俺たちは逃げ切った。


「ふぅ、何とか撒けた」


「はあ、はあ、はあ、」


公園から離れたベンチで休憩する。横にある自販機でポ○リを2缶買い一つをアリシアさんに渡す。


「ありがとう」


アリシアさんはベンチに座って開けると一気に飲む。缶を口から話すと下を俯いてしまった。


「ごめんなさい。迷惑をかけて」


「俺こそごめんなさい」


「?」


隣に座った俺の方を見てきた。それに少し目を反らしてしまう。


「俺は……アリシアさんの気持ち、考えてた。考えてたんだ。でも、行動に移せなくて……さっきの事だって、そもそも俺がアリシアさんをちゃんと、その、あ、アリシアって呼んでいれば起こらなかったし」


「違う」


言葉を遮られた。そして、その言葉は重く聞こえたように感じた。


「本当は、ちょっとした意地悪のつもりだったの。呼び捨てにしてほしいって、あれ、別に対して気にしてなかった。ただ、日向に勇気を出させようとした私の演技……その筈」


「でもいざ店の外に出て演技を辞めたら、自分が思った以上に残念がって、勝手に意気地なしって思って、周りを見ずに歩いちゃって、それで人にぶつかって」


アリシアさんの手は震えてた。自分の行動に自分で苦しんでいる。その覚えは沢山ある。俺の場合はそのどれもが自分に勇気があれば……それで解決できていた。


ヒーローって、大事な時に勇気を出せる人じゃないのかな。俺の夢にそれは必要なんだ。そうだろ。風丸日向。


「ありがとう」


俺は目をそらさずアリシアの方を見て言う。


アリシアは横からでもわかるほどに驚いた顔をしていた。


「でも」


「おかげで勇気が出せたよ」


俺は手をだす。握手を求める。これが最大の答えと思ったから。


「俺は風丸日向。これからよろしく。アリシア」


だからオドオドした最初の自己紹介ではなく、こう成りたかった、今成れている自分で自己紹介をする。


「そのタイミングはずるいよ」


アリシアは帽子を深く被ふ動作で顔を隠す。


「そんなことされたら、握手をしないわけにはいかないじゃない」


そう言って俺の方へ向いて俺の手を取った。


アリシアの顔は赤かった。恥ずかしそうなその手は不規則に強く握ってくる。


「私は、アリシア・ミラー。こちらこそよろしく」


アリシアは少し情けない笑顔で答えた。





__________________




アリシアさん可愛いよと思った人★★★お願いします(強欲で貪欲で乞食な自己中)また、感想を貰えると作者のモチベが多分上がります。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る