39 編集者を雇ってみた②
それから一週間。
リリアとメイスイはソクルでゆっくりとして過ごした。
その間にリリアはどうにか自分で編集ができないか調べてみたのだが、結論から言うと難しかった。
なんといっても必要とされる魔法の知識のレベルがとても高いのだ。それこそ学校で魔法をしっかりと学ばなければたどり着けないようなレベルである。
それを頑張って学ぶのなら旅をしたいということで、自分で編集をするのは早々に諦めた。
そして、諦めてからはソクルの町の中を懐かしさに浸りながら巡ったり、長らく会っていなかった人と会ったりと楽しんでいた。
メイスイはというと、リリアについて行くこともあったが、たいていはゴロゴロして過ごしていた。
ベッドの上だけじゃなく孤児院の庭に出て元の体で日向ぼっこをしたりもしていたのだが、ときどき子供たちに絡まれていた。しかし、嫌がるわけでもなく一緒にお昼寝をしていたのを見て、やっぱり優しい一面もあるなとリリアは思った。
そんな感じで十分に過ごし、遂にソクルを離れることにしたのだった。
出発の用意をしたリリアは院長先生の部屋に行く。
「ロキア先生、そろそろ出発しようと思います」
「もうですか。では見送りに行きましょうかね」
ロキアはそう言うと、外までついて来てくれた。
建物の外に出るとリリアは改めてロキアの方を向く。
「ロキア先生、短い間でしたがありがとうございました。会えてうれしかったです」
「そんなこと言わずにまだいてくれてもいいのですよ」
「いえ、そろそろ次の街に行きたいですから」
「そうですか。まあ仕方ありませんね。あなたは昔からそういう子でしたから。でもいつでも帰ってきてくれていいのですからね」
「はい、ありがとうございます!」
ロキアとそんな話をしていると建物の中から子供たちが出てきた。
何やら気配を察知したのだろうか。
子供たちは走り出すとメイスイに抱き着く。
メイスイは少し困りながらも子供たちに別れの言葉を言っていた。
なんやかんや子供たちとより仲良くなったのは自分ではなくメイスイだったのかもしれない。
「さて。ではそろそろ出発するとします。ロキア先生、みなさん、ありがとうございました。また帰ってきます!」
「ええ、いつでも帰ってきてくださいね」
そう言葉を交わし次の街へと向けて進みだす。
振り返るとみんなが手を振ってくれていたのでリリアもそれに手を振り返した。
狐さんバイバーイ、という子供たちに向かってメイスイも手を振っていた。
そうして、メイスイとリリアは次の場所へと出発したのであった。
「それでどこに行くんだっけ?」
町の外に出るとメイスイが聞いてくる。
リリアは鞄の中から地図を取り出すと指をさしながら説明する。
「昨日説明した通り次はクラケスに行こうと思います」
昨日の夜、次にどこへ行こうか考えていて、ソクルに来る前に助けた商人のことを思い出したのだ。
彼らはクラケスまで行くと言っていた。また、そこに店を構えているとも言っていた。
そのため、折角だからそこに行ってみようと考えたのだ。
「ここから思ったよりも近いですね。頑張れば今日中につくのではないでしょうか」
空を見上げながら言う。まだ日は高く昇っていないから、急げば日が沈む前に着くことができるかもしれない。
「じゃあ、早く行こうよ。テントより宿で寝たいし」
多分ベッドで寝たいんだと思うメイスイがせかす。
「わかりました。じゃあ、行きましょうか」
そう返答しリリアはメイスイの背中に乗った。
移動するときの毎回の定位置である。
「よし、乗ったね。じゃあ行くよ!」
そう言うとメイスイはクラケスを目指し走り出したのであった。
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