16 【報告】新しい仲間が増えました⑤
「あった、あれだよ」
メイスイについていき、リリアはゴブリンの住処を見つけた。
今は近くの茂みに隠れながらそれを見ている。
確認したところ、どうやら個体数は10匹前後でそれほど大きい群ではないようだ。
それに、野菜やらを手に持っている個体もいることから、あれが村に迷惑をかけているゴブリンたちで間違いないだろう。
「で、これからどうするの」
「そうですね、私が強化魔法をかけますから、メイスイさんにはゴブリンの退治をお願いします」
「了解。僕はいつでもいいよ」
「わかりました。じゃあ早速やりましょうか」
そう言い、リリアはメイスイに強化魔法をかける。
身体能力上昇に、防御力上昇、回復力上昇の3つをかけた。
「わあ、これいいね。すごく体が軽いや」
メイスイがその場でぴょんぴょんとはねる。
いくら隠れているとはいえ、そんな大きな体ではねたらゴブリンにばれるのではないだろうか。
「じゃあ行ってくるよ」
そう言うとメイスイはすごい勢いでゴブリンの群れへと駆け出した。
突然の奇襲に気付いたゴブリンが戦闘態勢に入る。
しかし、完全に戦闘態勢になる前に一番近い個体をメイスイが噛み千切った。まずい、というように嫌な顔を出しながら口から残骸を吐き出す。
そのすきにゴブリンたちが手に持つこん棒で襲い掛かった。
しかし、メイスイはそれをひらりと躱すと、前足を使い次々にゴブリンを引き裂き始める。
ただでさえ少なかった個体数がもう一匹になっている。
「最後はちょっとカッコつけちゃおうかな」
そう言うとメイスイは一吠えする。
最後のゴブリンに天から雷が落ちた。後に残ったものは黒焦げになった死体であった。
これですべての退治が完了だ。
得意げな顔をしたメイスイがリリアの元に戻ってくる。
「どうよ、僕の力は」
ドヤ顔をしながら言う。
正直、強化魔法をかけていたとはいえ、予想以上に強くて驚いた。これならば教会で伝えられる聖獣となっていることも頷ける。
「正直すごかったです。さすが聖獣です!」
率直に褒められたからかメイスイは少し照れた顔をする。
これがなければ最後までかっこよかった気もするが、逆にかわいいのでこれはこれでありである。
「ま、まあ、リリアの強化魔法もすごかったよ。僕の能力をあんなに上げるなんてなかなかできることじゃないよ。さすが僕が認めただけのことはあるね」
そう褒められて今度はリリアの顔が照れたようになる。
今までお礼を言われたことはたくさんあったが、ほめられたことはあまりなかったのだ。
聖女は基本一人だから比べる人もいないし、そもそもほめるという行為は自分より立場が上か同等の人からされるのが普通であると思う。褒められるには聖女という立場は高すぎた。
「うん、決めた」
メイスイがリリアの方を向く。
それに対してリリアもメイスイの方をちゃんと向く。
「僕に仕えてっていたけどさ、それ取り消すよ。その代わり僕がリリアについていくけどいいよね?」
突然の申し出にリリアは驚く。
仕えなくてよくなったのは嬉しい。これで自分の行動が無理に制限されることはなくなった。
しかし、今度は聖獣である妖狐が自分の旅についてくるというのだ。
「だって君、思ったよかおもしろそうなんだもん。それならばついていくしかないでしょ」
確かに仕えるよりは自由だろう。だけど、一人と一匹の行動になるのだ。一人の時よりは制限されることもあるんじゃないだろうか。自由に旅して動画を撮りたいという願いが少なからず妨げられることには変わりはないだろう。
でもその一方で、とリリアは考える。戦力が増えるのだ。それも、他では得られないほど大きな戦力が。
そうすれば、今まで受けることのできなかった魔物討伐や危ない場所へ行く依頼を受けることができるようになるのではないだろうか。そうすると、撮ることのできる動画の範囲も大きく増えることになる。
どうしましょう、と二つの相反する感情でリリアはしばらく葛藤をしていた。
そして、意を決して答える。
「わかりました、メイスイさん。ついて来てもいいですよ」
「やったね!」
「ですが、一つだけ条件があります」
そう言い、リリアは鞄から魔装撮影機を取り出した。
「私は動画撮影をしたいのでそれに協力してください」
「ドウガサツエイ?なにそれ?」
「映像を撮影してみんなが見れるようにするんです。それに協力してください。私の仲間として」
「それって面倒くさい?」
「メイスイさんにとってどうかはまだわかりませんが、私にとっては一つの楽しみですよ」
メイスイは少しだけ考えた後、
「わかった。ドウガサツエイ?とやらに協力するよ」
と、答えた。
「ありがとうございます。ではこれからよろしくお願いしますね、メイスイさん!」
「うん、よろしく、リリア」
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