14 【報告】新しい仲間が増えました③
「リリアさん、今回は本当にありがとうございました。この村の村長としてお礼を申し上げます」
「いえ、私は依頼を受けただけですから」
「そんなご謙遜なさらずとも。本当になんとお礼をしたらよいか」
「いえいえ、本当に皆さんが元気になってよかったです」
リリアは村長の家に来ていた。
目の前にいる村長はさっきから何度もお礼を述べてくれている。
「そう言っていただけると助かります。本当は今この村にはお礼をするだけの余裕もありませんから…」
「なにかあったんですか?」
リリアが尋ねる。
病気が村中に広がっていたこと以外にも何か問題が発生しているのだろうか。
「実は1か月ほど前からこの村の近くにゴブリンが住み着いているようなのです。ゴブリンは村の野菜や家畜を奪っていくため、食糧が減るばかりなのです」
村長が頭を抱える。
「今はまだ飢餓者を出すほどではありませんが、この先はどうなるかはわかりません。ああ、どうしてこんなことになってしまったのか…」
ゴブリンというと比較的弱い魔物である。冒険者で言うとDランクあれば一匹を危なげなく倒せるといったレベルだ。
そのうえこの国は聖力で作った結界に覆われているから、ゴブリンの力はさらに弱まっているはずである。
しかし、それでも戦う訓練を積んでいない者には倒すのは厳しいだろう。それにそもそもゴブリンは基本群れで生活する魔物である。そういった意味ではCランク以上の冒険者の対応案件の可能性が高い。
「それは本当に困りましたね」
そうリリアは返答する。
ここまで来たのならできるだけ力になりたい。でもリリアだけではゴブリンを倒すことができない。
聖女は回復や支援などの魔法に優れている。そのため戦い自体は他の人に頼ることが普通である。したがって、一人では戦うことができないのだ。
ここは申し訳ないが、他の冒険者に頼ってもらうしかないだろう。
「すみません、私ではその件はお力になることは難しくて…」
「いえ、とんでもございません。村のみんなの病気を治してもらったのです。それだけで我々は十分に助かっております」
気を使わせてしまったようで申し訳ない。
でも、できないことは無理にやらず他の人に任せることが吉であろう。
とはいえ、病気に関しては最後まで関わろうと思う。病気というのはその元を絶たなければまた発生してしまうものだ。どこまで力になれるかわからないが、その原因の発見くらいには役に立てるのではないだろうか。
「お力になれなくて申し訳ありません。ですが、今回の病気の件に関してはちゃんと最後まで関わらせてもらうので安心してくださいね」
「本当に何から何までありがとうございます」
「ところで、何か病気が発生した原因に心当たりはありますか?」
リリアはそう尋ねる。
「いや、特には…。ですがこれはゴブリンの仕業ではないかと言いているものがおります。それと、村の外で異臭のようなものがしたと申しているものも」
たしか、今までの話を思い返してみるとゴブリンの発生の後に病気が広がり始めたようである。ゴブリンが病気の原因というのもあながち間違いでもないのかもしれない。
それに異臭というのも気になる。
「わかりました。では少しこの村や周辺を見て回ってもいいですか?」
「もちろんですとも。よろしくお願いいたします」
村長の許可を得てリリアはまず村の見回りに行く。
病気の蔓延にはまず衛生状況の悪化が考えられる。不衛生な所ではどうしても病気が発生してしまう。
しかし、今時、衛生に対する意識が低いところはそう見受けられないものだ。だからこそその可能性は低いかもしれない。
そう考え村中を見て回るも、案の定それらしき原因は見つけられなかった。
そうなればやはり村の外に原因があるという事が妥当であろう。
村の近くであれば、採取や木こりで村の外に行った人が持ち帰り村の中に広がったなんてこともあるかもしれない。
村の周辺には少し離れたところに森がある。
そこに原因がある可能性はある。
ただ、ゴブリンが住み着いているかもしれないとのことだから充分気を付けて行かなければならない。
そう考えながら、リリアは森へと行った。
調査を始めてすぐ、異変に気付く。
とても臭いにおいがするのだ。これがおそらく村長の言っていた異臭であろう。
鼻をつまんで鼻への刺激を抑えながらにおいの方へ進んでいくと、大量の葉が積まれたところを見つけた。
周囲はそんなに積もっているところはないため、ここだけ明らかに異質である。
リリアは近くにある枝を拾うとその葉を少しかき分ける。
すると下に隠されていたものが明らかになった。
牛や鶏といった家畜の残骸が腐敗したもの。
たしか、ゴブリンに家畜が盗まれたと言っていた。
家畜を盗んだゴブリンはある程度食べた後、残りをここに埋めたようである。
それが腐って病気の発生源となったようだ。
取り敢えず原因は分かった。村長に知らせなければならない。
そもそも早くこの嫌なにおいのしないところに行きたい。
そう思いリリアはその場所から足早に離れ、村を目指しだした。
においの元から離れ、ようやく花をつまむ手を離したところで、突如後ろから声をかけられる
「なんだ君だったのか、あの聖力は」
誰だろうと思いリリアは後ろを振り返った。
見るとそこにいたのは、大きな狐であった。
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