(二)-9

 鯵ヶ沢と藤崎は互いに顔を見合った後、ドアを開けてそっと中に入った。「失礼します」と声を掛けて玄関で靴を脱ごうとした。

 よく見るとそこには革靴が二足とスリッパが二足あった。

 鯵ヶ沢は不審に思いながらも、靴を脱いで玄関に上がった。そしてすぐ左手にあるキッチンの方を見た。この視線を左から右方向に動かして部屋全体を見回そうとしていた。しかしそれは「下沼勇!」という突然の野太い男性のかけ声で遮られた。

「重要参考人として署まで同行してもらおう」


(続く)

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