(二)-10

 鯵ヶ沢が声の方を見ると、部屋の奥からワイシャツにネクタイ姿の男性が二人おり、その後ろにはエプロン姿の初老の女性が一人立っていた。そして男性のうちごま塩頭の男性は、手帳をこちらに向けていた。それはよく知るマークの入ったものだった。警察手帳だ。

「ちょっと待って下さい。私たちも警察です」

 藤崎がそう言うと同時に、鯵ヶ沢がズボンの後ろポケットから手帳を取り出し、表紙を見せた。

「同業者だ。私は北海道警察本部の鯵ヶ沢だ。こっちは同じく藤崎だ」

「同じ道警の?」

 相手の刑事はそう声を上げた。

「私は道警黒松内署の林崎、こっちは森田です。そして奥にいるのが、こちらの大家さん」

 そう言って男性は軽く手の平を額に当てて敬礼した。

 それを見て鯵ヶ沢も慌てて敬礼を返した。


(続く)

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