第4話 アンドロメダ 

「…………終わりですよ?」


 肩をつつかれ、アンドロメダは目を覚ました。

 振り返ると、後ろに座っている女の子がこちらを見ていた。

 それと同時に、周りの人が起立する。

 慌ててアンドロメダも立ち上がった。

 

「以上を以て、入学式を終了致します。…………一同、礼」


 メル先生の合図に合わせ、会場全体が礼をする。

 どうやら、寝ている間に退屈な式が終わったらしい。

 

 それで終わりかと思っていたのだが、再び着席させられた。

 プログラムはまだ続くようだ。


 ――――――


 しばらくして、メル先生に代わり学園長が話し始めた。


「皆さん、お疲れ様でした。これより休憩を挟んで午後の部に移りたいと思います……………………」


 午後の部?

 聞いてないぞ、とアンドロメダは首をひねる。


「…………午後の部は屋内闘技場にて行いますので、間違えないようにお願いします。それでは…………解散する前に騎士科の新入生を紹介しておきましょう」


 騎士科の新入生を紹介する?

 それも聞いてないぞ、と焦る。

 注目されるのは苦手だった。

 何を隠そうこのアンドロメダも、「騎士科」に合格した数少ない生徒の一人なのである。

 それも、次席――上から2番目の成績で…………………………。

 

「…………今年は新たに7人の生徒が騎士科に加わります。呼ばれた生徒は前の方に来て下さい。ペルセウス・アンハルトさん……………………いませんね。アンドロメダ・キールさん…………」


 早々に自分の名前が呼ばれてしまった。

 とりあえず「はい」と返事をする。

 先程まで寝ていたせいか、ひどく間延びした声が出た。


「いますね…………。前に来て下さい」


 注目が集まる中、アンドロメダは「すみません」と人をかき分け、前へ出る。

 まだ着かないうちに学園長が続けて言った。


「続きまして…………レグルス・スターライトさん…………」


 スターライト――――この国の王家の姓である。

 つまり、今立ち上がり前へ出てくるこの少年が、噂の第二王子だということだ。


 一瞬だけざわつく会場。

 しかし、学園長は気にせずに続けた。

 

 そのまま順に7名の生徒の名前が呼ばれ、しかし前には6名の生徒が集まり、学園長からの激励を以て式は解散となった。

 

 その後、6人はそのまま教室に移動することになった。

 午後の説明があるらしい。

 メル先生に先導され、一同は仄暗い学園の通路を進んで行く。

 先頭にはレグルスが続いていた。

 「次席は僕なんだけどな」と思いながらも、人の上に立つのが性に合わないアンドロメダは、最後尾をゆっくり歩いていた。


 雨はまだ、降り続いていた。

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