第26話 ザ・配信事故
「えー、どうもーキチクこと菊池修吾です、いえーい。みなさんよろしくー、初めましての人は初めまして!そうでない人もこんにちはこんばんはおはようございまーす」
配信開始直後、俺は挨拶をする。
配信開始と同時にコメントが流れる。同接は……三千を突破した。
『待てましたぞー』
『キタ――(゚∀゚)――!! 』
『キチクさんキター!!!』
『うおおおおお生キチクだあああああ』
『キチクさんちぃっす!』
『待ってた』
『今日は何? 雑談? ゲーム?』
「はい、今回はですねー、マヨイガダンジョン攻略配信です。一度攻略したダンジョンですが、マヨイガって毎回毎回、あの手この手でトラップ仕掛けて来て面白いんですよね」
『知ってる』
『こないだの笑った』
『なんでクイズ出して来るんだよダンジョンが』
『あれはワロタwwww』
『キチク以外の配信者のマヨイガアタックいくつか見てるけどみんな凄いもんな』
『めっちゃ楽しんでる』
『こないだ服だけ溶かすトラップ仕掛けてきたけどなんでその罠仕掛ける相手が男なの?』
『大盛ラーメン制限時間以内に食べないと突破できない部屋とかさwww』
「うーん、流石はマヨイガ。探索者の皆さんも楽しんでもらえてるようでうれしいですよ、ダンジョンマスターカッコカリとしては。
まあ、まだ突破してマヨイガ邸宅にたどり着けた人いないですけど……皆さんならいつかたどり着けると思ってますよ。
マヨイガは人をもてなす家。攻略不可能な難易度にはしないはずですからね」
『それな』
『確かに、キチクはあっさりクリアしたよね』
『楽しかったわー、あそこ。また行きたい』
「あそこはね、良い場所ですよ。おすすめです。……で、早速行ってきましょうか」
俺はカメラに向かって歩き出す。
「今回同行してくれるのはこちらの方々! まずはいつもの……」
「どうもー、座敷わらしの千百合でーっす」
「ふ、ふふふ……みんなのアイドル……泉津日狭女……よ、よろしく」
「そして特別ゲストの!」
俺は彼女に向かって手を広げ、画面に紹介する。
「え、えっと……その、よ、四代目カッパおじさんです……」
その瞬間、コメントが一気に加速する。
『!?』
『カッパおじさんちゃんキタ―(゚∀゚)―!!』
『まさかの本人登場w』
『マジかよww』
『期待してた』
『やべえテンション上がって来た』
『おいおいハーレムじゃねぇかキチク野郎そこ変わってくださいお願いします』
盛り上がるリスナーたち。水面ちゃんは顔真っ赤になっている。
ちなみに彼女のステータスの伸びは結構いい。加えてスキルもいくつか発現している。
なんとモンスターテイミングスキルだ。レアスキルである。
羨ましいぞちくしょう。
「さて……それでは進みますね」
俺たちはマヨイガダンジョンに足を踏み入れる。
すると、扉がすっ、すっと開いていく。廊下が伸びる。まるで……
「あれれー、俺たちを案内しているみたいですねー。なんでしょうかこれはー、どう思いますか千百合さん」
「え、えっ? えーと、これは今までにない展開ですねー、進んでみましようー」
「はいそうですねー、それではレッツゴー」
俺たちは進む。
『なんか棒読みwwwww』
『どうしたキチク?』
『緊張してんじゃね?w』
『いやキチクだぞ』
「いや、別にー。俺いつもこんな感じですだよー?」
そして廊下は進んでいく。廊下が伸びていく。
トラップも妖怪も出てこない。ただ目的地へと進んでいく。
そして、蔵の扉のような、鈍重な扉が目の前にある。
「おおっ、なんかすごそうな扉だぞー。ではあけてみましょうー」
「お、おーっ」
俺は扉を開ける。
すると……。
『? 洞窟?』
『なんか鍾乳洞みたい』
『雰囲気変わったな』
『いま一瞬配信止まったぞ』
『こっちも。通信環境悪い?』
「ふ、ふふふ、大丈夫、そっちは私が何とかするから。わ、私の呪い……じゃない、毒電波で」
日狭女が笑う。頼もしいな。
しかしやっぱりそうなったか。
繋がらないというのは想定していた。目的のために携帯用魔石Wi-Fiを買わないといけないかなと思っていたが、日狭女がスキルで代用できるらしい。
『何? こわい』
『こわかわいい』
『日狭女ちゃん可愛い』
「えへ……えへ……」
「それじゃあ中に入っていきますよー」
俺はそう言って、ダンジョンの奥に歩を進める。
洞窟だ。リスナーが言ったように鍾乳洞のような感じだ。
そして、所々に明かりがついている。
電灯だ。
人工の明かりが設置されていた。
そして……。
「ややっ、あれはなんだー、うわー」
俺は言う。
そこには、檻が詰み上がっていた。
その中にいたのは……。
『え?』
『モンスター?』
『いや、人間もいるぞこれ』
『妖怪だろこれ……え?』
『ちょっとまって何が起きてるの』
『??????』
『配信事故?』
『モンスターが捕まってる……?』
俺は千百合のほうを見る。彼女は指で丸をつくった。
ばっちりと撮れているし配信されている。
今の同接は三万人もいる。リスナーたちが見てくれている。
予想どおり、そして計画通りだ。まさかこんなに早く見つかるとは思わなかったけどな。運がいい。さすが座敷わらしだ。
俺は言った。
息を吸い込んで、大きく。
「あれれー、しまったなー、マヨイガのいたずらかなー、どうやらマヨイガダンジョンは別のダンジョンにつながってしまったようだぞー!」
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