5 私は邪魔者

 馬車が大学に到着した。


久々にレオナルドと会話が弾んで楽しかったので、馬車を降りると正直な気持ちを告げた。


「レオナルド様、今朝は色々お話ができて楽しかったです」


すると何故かレオナルドは一瞬、目を大きく見開き、笑顔を見せた。


「ああ、俺も楽しかったよ。それでレティ、放課後だけど……」


レオナルドが言いかけた時。


「レオナルドー!」


大きな声で、カサンドラさんが私達の方に駆け寄ってきた。


「おはよう、カサンドラ」


「おはようございます」


2人で交互に返事をすると、カサンドラさんは笑みを浮かべて話しかけてきた。


「おはよう、レオナルド。レティシアさん、本当に2人は仲が良いのね。何だか妬けちゃうわ」


「カ、カサンドラ……」


レオナルドが困った顔を浮かべる。


「フフフ。冗談よ、レティシアさん、体調はもう良くなったの?」


「はい、お陰様ですっかり良くなりました。折角お見舞いに来てくださったのに、お会い出来ずに申し訳ございませんでした」


「いいのよ、かえって悪いことをしてしまったと思っているの。具合が悪い時にお見舞いに来られても迷惑だものね」


「い、いえ。迷惑だなんて……」


するとレオナルドが会話に入ってきた。


「カサンドラ、昨夜は遅くに寮に帰らせてしまってすまなかった。寮母から何か咎められなかったか?」


「いいえ、それなら大丈夫よ。寮の門限は日付が変わるまで大丈夫なのよ」


「え? そうだったのか?」


「知りませんでした……」


2人で驚いていると、カサンドラさんが笑った。


「いやだ。本気にとってしまったの? 兄妹だけあって、さすが反応が似ているわね。今のはほんの冗談よ、門限は22時までなの。だからまたデートに誘ってね?」


はっきりデートと言い切るカサンドラさん。

やっぱり、彼女はかなり積極的な女性のようだ。


「そ、そうだな……それで、レティシア。今日の帰りはどうする? アルバイト先の店に行くなら、馬車で送ろうか?」


レオナルドが尋ねてきた。


「あら、そうだったの? なら私も行くわ。いいでしょう? レティシアさん」


カサンドラさんは何故か私に尋ねてきた。

そうだ、カサンドラさんとレオナルドはいずれ、婚約するはず。

2人のデートの邪魔をするわけにはいかない。


「あの、私は大丈夫ですのでカサンドラさんを優先して下さい」


「え? レティ。だけど、どうやって帰るつもりなんだ?」


「そうよ、何も遠慮することなんかないのに」


私の言葉に2人が怪訝そうな表情を浮かべる。


「私、放課後残って休んでいた分のノートを友達に見せてもらおうと思っているんです。何時に終わるか分かりませんので」


とっさに思いついたでまかせを口にする。


「レティ……」


「そういうことなら仕方ないわね」


「はい、なので本当にお構いなく。それでは私、行きますね」


じっと私を見つめてくるレオナルドの視線を引き剥がすように、顔を背けると急ぎ足でその場を立ち去った。


できるだけカサンドラさんと一緒にいることを避けなければ、私とレオナルドが実は兄妹ではなかったことがバレてしまうかもしれない。


背後から感じる痛いほどの視線から逃げるように、私は歩く速度を早めて教室へ向かった。


レオナルドとカサンドラさんが一緒にいることに、少しだけ寂しい気持ちを感じながら。


そして、その後……


私は衝撃的な事実を知ることになる――

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