22 祖母からの質問
それから約1時間後――
祖母に体を休めておくように言われ、リビングのソファで横になっていると馬車の止まる音が聞こえた。
「どうやらレオナルドが来たようね。出迎えてくるわ」
「はい、お願いします」
祖母がレオナルドを出迎えに外に出ていき、私は窓から2人の様子を見つめた。
レオナルドと祖母は向かい会って何かを話している。やがてレオナルドだけが馬車の前に残り、祖母が戻ってきた。
「レティ、それでは行きましょうか?」
「はい、お祖母様」
着替えは全てグレンジャー家にある。通学用のカバンだけ持つと祖母と一緒に家を出た。
「レティ! 具合はもう大丈夫なのか!?」
外に出ると、レオナルドが駆け寄ってきた。
「はい、もう大丈夫です」
「カバンを持つよ」
「ありがとうございます」
レオナルドにカバンをお願いすると、戸締まりをした。
「それでは皆で屋敷に帰りましょう」
祖母の声はどこか嬉しそうだった――
****
馬車が動き始めるとすぐに、祖母は向かい側に座るレオナルドに質問した。
「レオナルド、先程の女性のことだけど……ちゃんと送り届けてあげたのでしょうね? あの女性は何処に住んでいるの?」
「彼女は島の外から入学してきたので、学生寮に入っています」
まさかカサンドラさんも寮生だったとは思わなかった。
「何と言うお名前だったかしら?」
「カサンドラです。カサンドラ・アンダーソン。伯爵家の御令嬢です」
「そうなのね。でもまさかレティのお見舞いに来るとは思わなかったわ。大体、レオナルドが女性と一緒にいるのを見たのも初めてだし。それだけ親しい間柄ってことなのかしら?」
祖母は妙に質問をしてくる。
「それは……」
レオナルドは返答に詰まったのか、言い淀む。
「どうなの? レオナルド。あの女性とはどんな関係なの?」
「お祖母様、カサンドラさんは私のアルバイト先にも来てくれました。それにお店の商品を買って行ってくれた方です。カサンドラさんは……私とレオナルド様が本当の兄妹だと思って、心配して来てお見舞いに来てくれたのでしょう。そうですよね? レオナルド様」
私とレオナルドの婚約を考えている祖母の前で言うのは気が引けた。けれどレオナルドが祖母に追い詰められているのを見ていられなかった。
「レティ……」
驚いたように私を見るレオナルド。けれど、もっと驚いたのは祖母の方だった。
「え!? レティ……どういうことなの? あの女性があなたとレオナルドを兄妹だと思っているなんて」
「お祖母様、それは……」
レオナルドが言いかけるも、私はそれを止めた。
「いいんです、レオナルド様。私から説明します」
そして改めて祖母の方を向き直った。
「聞いて下さい、お祖母様。レオナルド様も私もグレンジャー家の養子になりましたよね? なので兄妹の関係と言っても間違いではありませんよね?」
「え、ええ……戸籍上は確かにそうかもしれないけど、でも血の繋がりは無いのよ?」
「はい、分かっています。ですが。実の兄妹ではないことを他の人たちに知られたら、何故なのか問われますよね? 私は自分の内情を……あまり知られたくはないのです。だから、大学内では私とレオナルド様は兄妹の関係にさせて下さいと私からレオナルド様にお願いしたのです」
「まぁ……そうだったの?」
怪訝そうな顔つきでレオナルドに尋ねる祖母。
「は、はい……」
頷くレオナルド。
「そうだったのね……なら仕方がないけれど……その話はまた後にしましょう」
祖母はため息をついた。
「はい」
「分かりました」
私の後に返事をするレオナルド。
きっと、お祖母様はお祖父様にも今の話をするのだろう……。
余計な提案をしたことでレオナルドに迷惑を掛けてしまったので、後で謝らなければ。
私はそっとレオナルドの横顔を見つめた――
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