21 意外な対応
「まぁ……レティの?」
祖母が私の方をチラリと見る。すると再びレオナルドの声が聞こえてきた。
「カサンドラは俺の同級生で、レティのことを知っているんです。本日大学でレティのことを聞かれて、風邪を引いて休んでいると話したら……お見舞いに行きたいと言ってきたのです」
「はい。レティシアさんはレオナルドの大切な家族と聞いているので、私も心配でお見舞いに来たのです。今、レティさんはどうしていますか? もし会えるなら……」
すると祖母が何故か首を振った。
「あら、そうだったのですか? 実は今、レティは眠っているのですよ。だから会わせてあげられなくて。折角お見舞いに来てくれたのにごめんなさいね」
そして残念そうにため息をつく。
え? 何故祖母はそんな嘘をつくのだろう? もう熱は下がったし、今こうして起き上がってお茶を飲んでいるのに?
「え? まだレティは熱が下がっていないのですか?」
レオナルドの心配そうな声が聞こえてきた。
「ええ、まだ少しね」
「そうでしたか……申し訳ございませんでした。まだレティシアさんの体調が悪いのに、押しかけるよな真似をしてしまって」
カサンドラさんが謝っている。
その声を聞いていると、悪いことをしている気分になってしまう。私なら構わないのに、何故祖母は断ったのだろう?
「いいえ、別に気にしないで下さい。こちらこそ、足を運んでいただいたのにごめんなさい。レオナルド、こちらの方を送ってさしあげて頂戴。その後はこちらに戻ってきなさい」
「はい、分かりました。……行こう、カサンドラ」
「ええ、レオナルド。それでは失礼致します」
レオナルドに続き、カサンドラさんが祖母に挨拶している。
「いいえ、こちらこそ失礼します」
やがて、2人は去っていったのだろう。祖母が扉を閉めると、私のところへ戻ってくると「お待たせ」と言って椅子に座った。
「あの、お祖母様。何故、カサンドラさんに帰っていただいたのですか?」
「だって、レティは昨日高熱を出したばかりなのよ? それなのに、訪ねてくるなんて……。ルクレチアは身体の弱い娘だったから、一度高熱を出したら丸3日は寝込んでいたわ」
そして心配そうに私をじっと見つめる。
「お祖母様、けれど私はもう熱も下がっているので大丈夫ですよ?」
安心させるために笑みを浮かべる。
「確かにそうかもしれないけれど油断は禁物よ。だから今日もここに泊まろうかと思っていたの」
「私ならもう大丈夫ですよ。だって服に着替えて、こうしてお茶を飲んでいられるのですから。お祖父様が寂しがっていると思いますから、どうぞ今夜はグレンジャー家にお帰り下さい」
「そんなことを言っても、やはり心配だわ。……そうだわ、なら今日は一緒に屋敷に行きましょう。30分くらいなら、馬車に乗れる体力はあるわよね?」
祖母が驚きの提案をしてきた。
「え? で、でも……」
「お願いよ。レティ」
じっと、祖母が見つめてくる。……こんなにも心配してくれているのに、無碍にすることは出来なかった。
「……分かりました。では、一緒にグレンジャー家に行きます」
「ありがとう。良かったわ、聞き入れてくれて。なら、早速レオナルドが戻ってきたら一緒に屋敷に帰りましょう」
「はい、お祖母様」
私が頷いたので祖母は上機嫌だった。
そして、後ほど私は知ることになる。
何故、グレンジャー家に来ることを祖母が提案してきたのかを――
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