20 祖母と私
祖父は屋敷に帰り、祖母が私の看病をするために残ってくれた。
「それじゃ、レティ。私は隣の部屋にいるから、何かあったらこのベルで呼んでちょうだい」
祖母が私に小さなベルを手渡してきた。
「そんな……お祖母様をベルで呼ぶなんて」
「具合が悪いのだから遠慮なんかしなくていいのよ。時々様子を見に来るからゆっくりお休みなさい」
「はい、ありがとうございます。お祖母様」
ベッドに横たわると、祖母は頭を撫でてきた。
「ゆっくりお休みなさい、レティ」
「はい」
返事をすると祖母は部屋を出ていき、すぐに私は眠りに就いた。
夢を見ることもなく――
翌日、目が覚めた私を祖母は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。 朝食を用意してくれたり、着替えを手伝ってくれたり……。
体調は昨日に比べて、殆ど良くなっていた。着替えくらいは自分で出来ると申し出た。けれども、祖母が何も遠慮することなど無いからと言うので優しい言葉に甘んじることにした――。
――16時
祖母の看病のお陰ですっかり体調が回復した私はベッドから起き上がり、祖母とリビングでお茶を飲んでいた。
「良かったわ。レティの具合がすっかり良くなって」
祖母が笑みを浮かべて、紅茶を口にしている。
「お祖母様の看病のお陰です。本当にありがとうございます」
「何言ってるの? 可愛い孫娘のためなのだから当然よ。……だけど、レティを看病していたら久しぶりにルクレチアのことを思い出したわ」
「お母様のことですか?」
「ええ、そうよ。あの子は病弱な子だったの。小さかった頃はしょっちゅう熱を出して、看病にあたっていたわ」
昔を懐かしむような遠い目で語る祖母。
「そうだったのですか……」
「ルクレチアは亡くなってしまったけれど、孫娘のあなただけでも私達のところへ来てくれて本当に嬉しいわ。これからもずっとグレンジャー家に残って、盛りたててくれるわよね?」
「お祖母様……」
その言葉は、遠回しにレオナルドとの婚約を勧めているように聞こえた。
レオナルドは、とても素敵な人だ。優しくて便りになるし、私にとても気を使ってくれている。
だけど、私の好きな人は……。
思わず、カップを握る手に力を込めたとき――
――コンコン
家にノックの音が響いた。
「あら? 誰かしら? レティ、私が様子を見てくるわね」
「はい、お祖母様」
祖母は扉に向かい、ドアアイから外を覗いて声をあげた。
「まぁ! レオナルド!」
レオナルドがここに……? 祖母の様子を見ていると、扉を開けて話し始めた。
「レオナルド。昨日はあんなに遠慮していたから、まさかここに来るとは思わなかったわ」
「ええ。今日もそうするつもりだったのですが、やっぱりレティのことが気になって」
レオナルドの声が聞こえてくる。
「そうなのね。……それで? 一緒にいるこちらの方はどなたなのかしら?」
え? 誰か一緒に来ているのだろうか? あいにく私のいる場所からは扉の外を見ることは出来ないので、レオナルドと一緒にいる人物が誰なのか分からない。
すると……。
「はじめまして、私はカサンドラ・アンダーソンと申します。レティシアさんのことが心配でお見舞いに伺いました」
カサンドラさんの声が耳に飛び込んできた――
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