4-20 断罪、そして明かされる真実 3

「い、違法賭博場に……通っているところを……ゴードンに目撃されてしまったからです……」


怯えながらもルーカス先生は白状した。その言葉に私達全員、驚いた。

ここ、『リーフ』では賭博は絶対禁止されており、他の地域では類を見ないほどの重い刑が課せられる。

昔、賭博場を拠点に様々な犯罪が横行していた。人身売買や違法薬物……中には凶悪事件に発展したこともあったからだ。


そこで賭博場禁止令の法律が制定され全て撤廃されたものの、未だに違法賭博場が後を絶たなかった。

摘発された人々には罪の重さによって様々な刑罰が科された。身分、財産の剥奪、そして十年以上の禁固刑等だった。


「たまたま、運悪く……違法賭博場に出入りしているところを見つかって……あろうことか、脅迫してきたんですよ! 警察に密告してやるって! 冗談じゃない、そんなことをされれば私が今まで医者として築いてきた地位も名誉も……何もかも終わりです!」


ルーカス先生は身体を震わせながら語る。


「あの男は言いました。自分がルクレチア様に飲ませているお茶のことを黙認してくれれば……警察には密告しないと。だ、だから私は……! 黙っているしかなかったのですよ!」


「お、お前という奴は……! それでも医者か!!」


父は顔を真っ青にさせて、完全に開き直ったルーカス先生を睨みつけた。


「……これは驚きですね。あなたは医者でありながら、ルクレチア様を見殺しに……いえ、殺人に手を貸したというわけですか? 自分の身の保身の為に」


レオナルドが冷たく言い放つ。


「何ですって!! 殺人に手を貸すなど……それはいくら何でも言い過ぎではありませんか!?」


ルーカス先生の言葉に、私はショックを受けた。……本当に先生には罪の意識がないのだろうか?


「本気でそんなことを言っているのですか? とても医者の言うセリフとは思えませんね」


シオンさんが呆れた様子でルーカス先生を見つめる。


「これは……もう警察に通報しなければならない話だ。お前も俺と同様、賭博をしていたのか。しかも、刑罰が重い『リーフ』で行っていたとは。おまけに……イメルダの父が毒をお前の妻に飲ませているのを黙認していたのだから」


「ああ……そうだな……」


アンリ氏の言葉に父が頷いた。


「だから! 本当の父親じゃないって言ってるでしょう!!」


ふたりの会話に激しく反論するイメルダ夫人。その様子をあざ笑うかのように見つめるフィオナが信じられなかった。


「け、警察だって……!」


真っ青になったルーカス先生はソファから突然立ち上がると、扉へ向かって駆け出していく。

突然の出来事に一瞬、私達は身動きが取れなかった。けれどいち早く父が動いた。


「待て! ルーカス!」


父が後を追い、アンリ氏とレオナルドも続いたとき――


「……どちらへ行かれるのですか? ルーカス先生」


扉の前に、チャールズさんが立ち塞がる。


「ど、どいてくれ!」


そこを父がルーカス先生を羽交い締めにした。


「逃がすか!」


「お、お願いです!! どうか……け、警察だけは……!」


「既に警察には通報済みです。……もう間もなく到着する頃でしょう」


すっかり怯えた様子のルーカス先生に、チャールズさんは言い放った。


「な、何だって!! い、いつの間に……!」


父に取り押さえられたルーカス先生の目が見開かれる。


「俺が、あの人に警察に通報するように頼んでおいたのですよ。毒花を見つけた段階でね」


シオンさんの言葉に、その場にいた全員が振り向いたのは言うまでも無かった――


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