12 歓迎する祖父母

「あの……でも本当に突然お邪魔して大丈夫なのでしょうか?」


馬車の中でヴィオラが心配そうにレオナルドに尋ねた。


「ああ、俺もそう思う」


憮然とした表情のイザーク。


「それなら大丈夫だ。レティシアの友人達ならいつだって祖父母は大歓迎してくれるさ」


レオナルドは笑顔で答える。


「そうですか? なら安心ですね。それにしてもレティのおじい様とおばあ様ってどんな方なのかしら」


「おじい様とおばあ様は……とても温かな人たちだわ」


そう、グレンジャー家の人たちはみんな温かで居心地がいい。冷たいカルディナ家とは違って……


 そんな私を、ヴィオラとイザークがどんな気持ちで見つめていたか……そのときの私は知る由も無かった――




****



「お帰りなさい、レティシア。それにようこそ、グレンジャー家へ」


グレンジャー家に到着した私達を祖父母は笑顔でエントランスまで出迎えに来てくれた。


「また戻ってきてしまいました……おじい様。おばあ様」


自宅に帰ると告げておいて、再びグレンジャー家に戻ってきたことが気恥ずかしい思いで挨拶をした。


「何も別にそんな言い方をする必要もあるまい。いつでも歓迎すると話していただろう。それで……君たちがレティシアの友人かね?」


祖父が私の背後に立っているヴィオラとイザークに視線を移す。


「はじめまして。私たちはレティシアの親友です。私はヴィオラ・エバンズ。そして彼は……」


「イザーク・ベイリーといいます。よろしくお願いします」


ヴィオラに視線を向けられたイザークは一歩進み出た。


「はじめまして二人とも。よく来てくれたわね」


祖母は満面の笑みを浮かべて二人に挨拶する。


「……」


一方の祖父は、何故か苦虫を噛み潰したかのような顔を二人……というか、イザークに向けている気がする。


「ほら、あなたも挨拶してくださいな」


祖母に促され、祖父は咳払いした。


「ゴホン、レティシアの友人であるなら歓迎しよう。ところで……君は本当にレティシアの友人なのだろうね?」


祖父がイザークに鋭い視線を向ける。


「え……っと……」


一瞬イザークの目に戸惑いが浮かび、私はすかさず口を開いた。


「はい、おじい様。おばあ様。イザークは私の親友です。私が自転車に乗れるようになったのは彼のお陰なんです。イザークが親身になって自転車の乗り方を教えてくれました。本当に彼には感謝しています」


「ほう……そうだったのか。それは失礼した。孫が世話になったようだな? ありがとう」


祖父の物腰が少しだけ和らぐ。


「いえ……」


イザークが頭を下げると、祖母が声を掛けてきた。


「ほらほら、立ち話も何だからまずはお部屋に入りましょう。そうだわ、レオナルド。二人に客室を案内してあげて頂戴。私達は先に応接間で待っているから」


「ええ、分かりました。それじゃ2人とも。部屋を案内しよう」


「「はい」」


その言葉にヴィオラとイザークが返事をすると、レオナルドは二人を連れて客室へと向かった。


すると祖父が私に話しかけてきた。


「レティシア。先に応接間へ行こう。お前には少し尋ねたいことがあるからな」


「ええ、そうね。行きましょう、レティシア」


「は、はい……」


祖父母の言葉に、緊張する面持ちで私は返事をした――

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