13 祖父母の質問

 私は今、応接間のソファに座っている。


そして何故かじっと私を見つめる祖父母を前に何とも居心地の悪さを感じていた。

一体何を言われるのだろうか……?


「ほら、あなたから言ってくださいよ」


祖母が祖父に目配せしながら小声で話しかけている。


「ええ? な、何故私が……」


困り顔で返事をする祖父の声もやはり小声だ。


「あなたはこの家の元・当主でしょう?」


「そ、それとこれとは関係無いだろう!?」


二人は小声で話し合っているつもりなのかも知れないけれど、あいにく全ての会話は私に筒抜けだった。

そこで私は自分から尋ねることにした。


「あの……おじい様、おばあ様。私に何か尋ねたいことがあるのですよね? 何でしょうか?」


すると、祖父が意を決したように咳払いした。


「ゴ、ゴホン! それでは尋ねるが……レティシア。本当は何も聞くまいと思っていたが……やはり聞かせてもらおう。一体、家で何があったのだ?」


「え?」


祖父はイザークのことを強い視線で見ていたので、てっきり彼のことを尋ねられると思っていたのに、まさか私のことだったなんて思いもしなかった。


「この島に一人で来たときから、何となくおかしな雰囲気を感じたのだけれど……もし、友人が訪ねて来る予定があったならお前のことだ。事前に我々に話していたのではないか?」


「あなたとはまだ数日しか過ごしていないけれども、そんな気がしたのよ……もしかして、あの子たちはレティシアを心配して追ってきたのじゃないかしら?」


「特にあの青年は……とても観光でこの島に来たようには見えないからな」


確かにイザークの様子は観光を楽しんで来たようには見えないけれども……

祖父母の考えは当たらずとも遠からずだった。


祖父母は私をすごく心配してくれている。これ以上自分の事情を隠しておくのは申し訳ない気がしてきたので、私は正直に言うことにした。


「おじい様……おばあ様……実は私、本当は誰にも内緒でこの島にやってきたのです。もう二度と『リーフ』には戻らないつもりで家出したのです」


「そうか……そうだったのか」

「何となく、そう思っていたわ」


てっきり驚かれるかと思っていたのに、祖父母の態度は冷静なものだった。


「あの、驚かないのですか……?」


「それは驚いたさ。何しろ今まで一度も会ったことのない孫が突然訪ねてきたのだからな」


「何か合ったのではないかと思っていたわ。事情を知りたかったけれども、貴女から話してくれるまでは待つつもりだったのよ。島での生活に慣れてきたらいずれ話してくれるだろうと思っていたけれども……」


「だが、友人たちが現れたのだか。やはり事情を事前に知っておきたいと思ったのだよ。それではレティシア。何故家出をしてきたのか……理由を話してくれるな?」


祖父がじっと私を見つめる。


「分かりました……私が何故家出をしてきたのか……理由をお話します」


私は二人に自分の事情を話すことにした――

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