11 不審者?
「ここがレティの家なのね? やっぱり白い壁に青い屋根なのね……本当になんて素敵なのかしら。それに風見鶏が屋根についているからすぐ分かるわね」
馬車から降りたヴィオラは笑顔で話しかけてきた。
「ええ、そうなの。でも、まだ暮らし始めたばかりだからほとんど荷物は無いけれど。どうぞ入って」
鍵を開けて扉を開けて中に入ると、続けてヴィオラ、レオナルド、そして最後にイザークが入ってきた。
「インテリアも素敵ね……センスがいいわ」
ヴィオラが部屋の中を見渡すとため息を付いた。
「部屋の家具は全て母が使っていたものなのよ。私が実際持ってきた荷物なんて衣類だけだから。新しく住む場所を見つけたら、少しずつ買い足そうと思っていたの」
そこへレオナルドが声を掛けてきた。
「レティシア。もし買い置きして日持ちがしない食材があるならグレンジャー家に運ぼう。何かあるか?」
「そうですね……キッチンに何種類かの野菜があるのですけど」
「そうか? だったら俺がまとめて馬車に運ぼう」
「本当ですか? 助かります」
「俺も手伝う。何か運ぶものはあるか?」
レオナルドがキッチンに姿を消すと、イザークが声を掛けてきた。
「他に……?」
運ぶものと言われても他に何も思い浮かぶものはなかった。
「いえ、後は無いわ。あるとしたら着替えの服だけだから。それは自分でするから大丈夫よ」
「着替えの服……? そ、そうか。それは悪かった」
罰が悪そうにイザークが目を伏せる。その様子にが何だか手伝って貰わないと申し訳ないような気がしてきた。
「あの、それじゃ戸締まりが大丈夫か見てもらえるかしら? 窓に鍵がかかっているかとか……」
「分かった。なら戸締まりをして回ろう」
イザークは少しだけ機嫌が治ったかのように、窓の方へ向かっていく。その様子を見ながらヴィオラが小声で話しかけてきた。
「フフフ……イザークったらレオナルド様に対抗心を燃やしているのかもね」
「え? 対抗心? 一体何のことかしら?」
すると目を丸くするヴィオラ。
「レティ……もしかして本気でそんなこと言ってるの? イザークはね……」
そのとき、窓に向かったイザークが声を上げた。
「何だ!? あいつ!」
「「え?」」
私とヴィオラがイザークの方を振り返ると彼は急ぎ足で扉へ向かって駆け出してき、そのまま外へ飛び出してしまった。
「一体何があったのかしら……?」
「さ、さぁ……?」
二人で顔を見合わせていると、麻の袋を抱えたレオナルドがキッチンから出てきた。
「どうしたんだ? 今の声……イザークじゃなかったか?」
「はい、そうなのですけど……」
「何故か外へ飛び出してしまったのです」
ヴィオラと二人で交互に答える。
「外へ? 何かあったのか?」
「実は……」
首を傾げるレオナルドに返事をしかけたそのとき――
――ガチャッ
扉を開けて外に飛び出していったイザークが戻ってきた。
「おかえりなさい、イザーク」
「イザーク、一体何処へ行っていたのよ」
私に続き、ヴィオラが尋ねた。
「いや……何だか、この家をあの茂みの奥から隠れて見ている人物がいたから様子を見に行ったんだ。それでもまだこの家を見ていたから、たまたま庭のポンプとバケツが目に入ったから、水を組んで撒いてやったんだ。そしたら慌てて逃げていったよ」
イザークが窓から見える遠くの茂みを指さした。
「え? 水を掛けてしまったの?」
その言葉に私は驚いた。
「もしかして、近所の人だったんじゃないの? ずっと空き家だったところに人の出入りが合ったから見に来たんじゃないかしら?」
「あ……ま、まずかったか……?」
ヴィオラの言葉にイザークが青ざめる。
「いや、でも本当に不審者だったかも知れないじゃないか。何しろ逃げていったのだろう? もしかすると……」
そして何故かレオナルドは私を見る。
「レオナルド様?」
「いや、何でも無い。どのみち、レティシアは1週間はグレンジャー家に滞在するんだからな。後でそれとなく駐在所に報告しておこう。それよりレティシア。準備は出来たのか?」
「はい、出来ました」
「よし、それじゃ馬車に乗ろう」
レオナルドの言葉に私達は頷き、戸締まりをしっかり確認すると全員で馬車に乗り込んだ。
グレンジャー家に向かうために――
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