6 私を探し出せた理由 1

「そうか? ならずっとこの島で暮せばいい。俺は……いや、祖父母も大歓迎だよ」


レオナルドは笑顔を向けてきた。


「そ、そんなレティ……やっぱり……ただの家出じゃなかったの?」


「本気で言ってるのか!?」


ヴィオラもイザークも驚きの表情を浮かべて私を見る。


「ごめんなさい……」


私はふたりに謝った。

それにしても分からない。ヴィオラが驚くのは理解できるけれども、何故イザークがそんなに驚くのだろう?

それ以前にどうしてヴィオラとイザークが一緒にこの島に来たのか不思議でたまらなかった。


「そう言えば、聞きたいことがあるのだけど……どうして私がこの島にいることが分かったの? それも、何も言わずに学園を出ていったのに」


私はヴィオラとイザークを交互に見た。


「そんなの、レティがパーティー会場に現れなかったから捜しに行ったに決まっているじゃない!」


「そうだ、黙っていなくなったら心配するに決まっているだろう!」


「ヴィオラ……イザーク……」


ヴィオラはともかく、イザークまで……怒るなんて。ひょっとして彼は私のことを友人だと思ってくれていたのだろうか?


「いつまでたってもレティの姿が見えないから、ずっと捜していたのよ? そうしたらイザークがセブランに詰め寄っている姿を偶然見つけたのよ」


「セブラン……確か、レティシアの婚約者のことだな?」


レオナルドがヴィオラに尋ねた。


「あいつ……よりにもよって、フィオナが着ていたドレスと同じ色のスーツを着てたんだよ。二人は仲良さそうに……呑気にワインなんか飲んでいた……レティシアがいなくなったって話をしても然程気にも止めていなかったんだよ!」


「え……?」


イザークの言葉に血の気が引く。まさか、卒業式の衣装をふたりが揃えていたなんて……それに、私の心配を少しもしていなかったと言う事実は少なからずショックだった。


「そ、そうだったのね……セブランとフィオナは……パーティー用の服をお揃いで……」


テーブルの上で組んでいた両手をギュッと握りしめる。


「何だ? そのふたり……頭がおかしいんじゃないのか? もう、そんな男とは婚約を解消するべきだな。慰謝料を要求してもいいくらいだ」


レオナルドが呆れた様子でため息をつく。


「そう……ですね……」


慰謝料はともかくとして、婚約の解消……確かにそれを行わなければ、いつまでたってもセブランとフィオナは結ばれることは出来ない。


「まぁ、その話はまた後にしておこう。それより、どうして君たちはレティシアがこの島にいると分かったんだ?」


確かに私もそれが不思議だった。誰にも行き先を告げずに『アネモネ』島へ来たつもりだったのに。


「それは、レティを探すために理事長室の前を通りかかった時、偶然聞こえてきたのよ。貴女が大学進学の取り下げの書類を提出してきたって話を。だからただの家出では無いと思ったの」


「!」


ヴィオラの言葉に、レオナルドは驚いたように私を見た。


「それで、レティシアがいなくなった付近にある辻馬車乗り場にヴィオラと一緒に行ったんだ。そうしたら、制服を着た女子学生を乗せて港まで連れて行ったという御者に会ったんだよ。それで船に乗って『リーフ』を出たに違いないと思ったんだ」


イザークが続きを説明した。


「なるほど、それでもよくこの島にレティシアがいると思ったな?」


レオナルドは余程、この話に興味を持ったのか腕組みをしながら頷く。


「ああ、俺がレティシアを最後に見た時……何も荷物を持っていなかった。だからあまり遠くへ行っていないと思ったんだよ。それに、以前自転車の乗り方を教えた時、俺に話してくれただろう?コバルトブルーの海がきれいな島で、青い屋根に白い建物の町並みを走ってみたいって……」


そしてイザークはじっと私の目を見つめてきた――

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