4 四人での話し合い
「レティ……」
ヴィオラは目を見開いて私を見ている。
「ヴィオラ……? 本当にヴィオラなの?」
あまりにも意外な場所でヴィオラと再会したので、一瞬彼女が本物なのかどうか疑わしくなって声を掛けた。
すると次の瞬間――
「レティ!」
ヴィオラは私に駆け寄ると、抱きついてきた。
「ヴィ、ヴィオラ……ど、どうしてここに……? それにイザークまで……」
イザークは何故か青ざめた顔で私を見ている。
「それはこっちの台詞よ! レティ! わ、私がどれだけ心配していたと思っているのよ……」
そしてヴィオラは私にしがみついたまま、すすり泣きはじめた。
「……ごめんなさい。ヴィオラ……」
私は彼女を左手で抱きしめ、右手でそっと髪を撫でるとレオナルドが声を掛けてきた。
「レティシア。もし、よければ何処か皆で喫茶店にでも入って話をしたらどうだろう?」
今まで黙って様子を見ていたレオナルドが声を掛けてきた。確かに今のヴィオラはかなり興奮している。何処かで落ち着いて話をしたほうが良さそうだ。
「そうね、ヴィオラ。何処か喫茶店に入りましょう? ……イザークも一緒に」
何故ヴィオラとイザークが一緒にいるのか分から無いけれども、私は彼にも声を掛けた。
「あ、ああ……そ、そうだな……」
イザークは視線をそらせながら返事をする。
「このすぐ近くに喫茶店があるので、皆でそこに入ろう」
レオナルドの提案に、私達は頷いた――
****
私達四人は喫茶店にやってきていた。私の隣にはレオナルド、向かい側にはヴィオラが座り、その隣にはイザークが座っている。
「それで、一体どういうことなのか説明してくれるんでしょうね? どうして何も言わずに黙っていなくなってしまったのよ。しかも卒業式の日に」
つい先程まで、泣いていたヴィオラが赤い目で私を見つめてくる。
「え、ええ……その日が家を出るのに丁度良かったの。……ヴィオラに黙っていたのは……引き止められるかもしれないと思ったし、セブランやフィオナに知られたくはなかったからなの……そうしたら父にもバレてしまうでしょう?」
「何言ってるのよ! ちゃんと事情を話してくれれば、そんなことするはずないでしょう? どれだけ私が心配したと思っているのよ……」
再びヴィオラの目に涙が浮かぶ。
「ごめんなさい……ヴィオラ」
まさかこんなにヴィオラを心配させてしまったなんて……罪悪感で胸が締め付けられる。
「やっぱり、レティシアがここに来たのはセブランとフィオナが原因だったのか?」
イザークが険しい顔で尋ねてくる。
「レティシア、セブランとフィオナというのは誰だい?」
レオナルドが尋ねてきた。すると――
「そう言えば、まだ名前を伺っていませんでしたね? 俺はイザーク・ウェバーといいます。彼女はクラスメイトだったヴィオラ。それで貴方は一体誰ですか?」
気のせいか、イザークの口調が強く感じる。
「あ、これは失礼。そう言えばまだ自己紹介をしていませんでしたね。レオナルド・グレンジャーと申します。レティとは血の繋がりはありませんが、親戚にあたります。どうぞよろしく」
そしてニコリと笑みを浮かべるレオナルド。
「親戚……?」
訝しげに首を傾げるイザーク。そこで私は説明することにした。
「ふたりとも、聞いてくれる。ここには私の母の実家があるの。レオナルド様は養子として母方の家督を継いでくださったのよ。今はレオナルド様と祖父母のお世話になって、ここで暮らしているの」
「そうだったのね? ここはレティのお母さんの故郷だったの……とても素敵な島ね。だけど……貴女のお父さんはここにいるのを知らないのよね?」
ヴィオラがじっと私を見つめる。
「……ええ。お父様にも黙って出てきてしまったから」
コクリと頷くとイザークが話しかけてきた。
「もしかするとここにいるのも知っているかもしれないじゃないか? レティからの連絡を待っているかもしれないぞ?」
「……多分それは無いと思うわ……私はあの屋敷ではいらない存在なのよ。ここにいるのも知らないはずよ」
だって、父は私に何の関心も持っていないのだから。
「そんな言い方するなんて……もしかして、もう『リーフ』には戻らないつもりなの?」
ヴィオラが訴えてくる。
すると――
「いいじゃないか。別にもう『リーフ』には戻らなくたって」
レオナルドが静かな声で言った――
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