第4話 猛獣
「わっ⋯あの方が、ヴィクター様ですか⋯?」
ノエルさんは私の顔を見て、笑顔で微笑んだ。
「ええ、そうですよ。⋯やはり、彼が恐ろしいですか?」
「そう言うことではなくっ⋯その、凄く背の高い人だから、驚いてしまいました。」
「そうですか、近くで見ればもっと大きく見えますよ。」
そう言うとノエルさんは私の荷物を持ってヴィクター様の方に歩み出した。
「さぁ、こちらへ。」
「は、はいっ!」
一歩ずつ進む度、ヴィクター様の姿が大きく見える。
「う⋯。」
「緊張しなくとも大丈夫ですよ、あの方は優しいので。」
ノエルさんの落ち着いた低い声で肩の力が抜けた。
「⋯初めまして、メリアの代わりに参りました、アルノメアです。」
「ああ⋯宜しく。」
声が重い!!
私何かダメなこと言ったかな!?
「ノエル、アルノメアを部屋に案内してくれ。」
「畏まりました。アルノメア様、こちらへ。」
何が何だか分からないままノエルさんに案内される部屋。
「後からヴィクター様が来られますので、ここでお待ちください。」
大きなソファに座った私に説明するノエルさん。
「え、二人きりですか?」
「ええ、後ほどメイドがお茶と菓子を持ってくるので、ごゆるりと⋯。」
そう言ってノエルさんは部屋を出た。
「二人きりなの⋯?」
「失礼します。」
「わぁ!」
ノエルさんと入れ替わりできれいな金髪のメイドさんが部屋に入った。
「すみません、驚かせてしまいました。」
「いえいえ、大丈夫です!」
メイドさんの手にはティーセットと美味しそうなお菓子の乗ったお皿が二つ。
「わ、美味しそう⋯。」
「あら、そうですか?」
「はい!すっごく美味しそうです!」
「ふふふっ⋯後でシェフに言っておきます。」
メイドさんはにこにこしながら部屋を出た。
「⋯一人になっちゃった⋯。」
部屋に静寂が訪れる。
「ヴィクター様、まだかなぁ⋯。」
「⋯待たせた。」
「わぁっ!?」
ガチャリと開いたドアからヴィクター様が入られた。
「すまない⋯。」
ずっと静かだったからびっくりしただけです。
「そんな、大丈夫です。」
「⋯私が怖いか?」
「えっ」
そんなことを聞かれるとは思って居なかった、何と答えればいいかな⋯?
「何故、そんなことを?」
「どうせ君の姉に私との結婚を押し付けられたのだろう?」
「え⋯ヴィクター様?」
「どうか素直にそう言ってくれ。」
待って、私物凄い誤解されてる?
「ヴィクター様、それは⋯」
「答えろ、君の姉が私との結婚を拒否したのだろう!?」
「⋯⋯っ!」
違う、違う。
何もかもが違う。
「お姉ちゃんはそんな人じゃない!!全部私の意志で今この場所に居るの!!」
私は怒りに任せてソファを立ち上がった。
「私のお姉ちゃんを侮辱しないで!!」
「あ⋯。」
「ああっ⋯。」
終わった。
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